既治療の進行・再発胃癌患者への選択的c-METチロシンキナーゼ阻害剤ARQ197(tivantinib)への単独投与は、安全ではあったものの、病勢コントロール率が約37%で、事前に想定した有効性が示されなかった。フェーズ2試験の結果で、静岡県立静岡がんセンターの安井博史氏が、10月27日まで横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 今回報告されたのは、進行・再発胃癌患者へのARQ197投与の安全性・有効性を検証する非盲検・単アームの日韓多施設共同フェーズ2試験。

 ARQ197は、c-MET受容体のチロシンキナーゼを選択的に阻害する経口薬。胃癌ではc-METの過剰発現が予後不良因子であることが報告されている。フェーズ1試験の結果から、薬物代謝酵素CYP2C19の代謝速度が速い患者(EM:Extensive Metabolizer)に対する推奨用量は1日2回360mgに決定された。

 今回検討したフェーズ2試験の対象は、2010年7月から2011年3月に、日本と韓国から登録された進行胃癌患者30人(うち胃切除患者は6人)。20歳以上、ECOG PS0または1、CYP2C19のEM患者で、1または2レジメンの投与を受けた進行・再発胃癌患者とした。薬物動態を検討するため、投与1日目は各投与量(120mg、240mg、360mgを1回投与)に患者を分け、投与2日から全例で360mgを投与した。

 主要評価項目は、病勢コントロール率(DCR:投与開始8週時点の完全寛解(CR)+部分寛解(PD)+安定(SD)の率)。副次評価項目は、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性、薬物動態など。抗腫瘍効果の判定は、独立した効果判定委員会が行った。

 患者背景は、年齢中央値が62.5歳、男性割合が約8割、ECPG PS1が7割強、腫瘍分化度が低分化の患者が約半数、胃切除歴のある患者が約6割、前治療レジメン数1の患者が約半数、進行胃癌患者が8割弱を占めた。

 主要評価項目のDCRは36.7%(95%信頼区間:19.9-56.1)だった。この試験は、事前に、DCR期待値60%とし、95%信頼区間の下限値20%を上回ることを検出力99%以上で検出できる症例数として試験対象者30例と算出されており、結果は95%信頼区間下限値が目標を下回ったため、有効性が示されなかった。CR例、PR例はおらず、ORRは0%で、SDが11人、病勢進行(PD)が19人。SDとPDの患者において抗腫瘍効果を予測する因子を検討したが、有意な因子は抽出されなかった。

 OS中央値は344.5日、PFS中央値は43日だった。

 グレード3以上の副作用では、貧血、好中球減少症がそれぞれ13.3%の患者で見られた。

 薬物動態では、日韓の人種差、胃切除歴の有無が大きな影響を与えないことが示された。

 これらの結果から安井氏は、「既治療の進行・再発胃癌患者に対し、ARQ197単剤を安全に投与可能だったが、主要評価項目のDCRは約37%で、有効性は示されなかった」とまとめた。また、同試験結果をもって胃癌患者に対するARQ197の開発が中止されたことを説明した。