繰り返した内分泌療法に抵抗性となったER陽性閉経後乳癌患者への低用量エストロゲン投与は、有効である可能性が報告された。フェーズ2試験EFSET Trialの中間解析で示されたもので、熊本大学乳腺内分泌外科の岩瀬弘敬氏が、10月27日まで横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 閉経後のホルモン依存性乳癌患者に対しては、アロマターゼ阻害薬(AI)を中心にしたエストロゲン枯渇療法が標準治療となっている。しかし、長期間、内分泌療法を繰り返すことで治療効果が得られなくなる患者が存在する。こうした内分泌療法に無効になった閉経後乳癌患者に対しては、低用量エストロゲン療法が有用である可能性が海外で報告されている。

 そこで岩瀬氏らは、AIに無効となった閉経後乳癌患者を対象にエチニルエストラジオール(EE2)を投与するフェーズ2試験を行った。

 対象は、2010年10月から2012年2月までに登録したER陽性・HER2陰性で、内分泌療法(化学療法も含む)に無効となった閉経後乳癌患者15人。同試験は、2009年12月に開始し、EE2を1日に3mgもしくは6mg投与する用量設定フェーズ2試験として開始したが、1日3mgを投与するパイロット試験において3例中2例で奏効が得られたため、1日3mg投与の単独アームで試験を継続した。

 主要評価項目は、臨床的有効率(CBR)、副次評価項目は有害事象、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)など。観察期間中央値は8.5カ月。

 患者の年齢中央値は63歳(範囲58-83歳)。3例は内分泌関連症状のために早期中止に至った。

 4週間以上のEE2投与が可能だった12例中8例(53.3%)で部分奏効(PR)が得られた。安定(SD)は3例(20.0%)、病勢進行(PD)は1例(6.7%)だった。

 治療開始4週間後には、血清エストラジオール濃度が上昇したほか、卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度の低下が確認された。PRと、SDまたはPDにおけるホルモン環境に大きな違いは見られなかった。

 4週間以上投与できた患者12例中11例において、乳頭・乳輪の色素沈着、子宮内膜肥厚が確認された。グレード3以上の有害事象はなく、グレード2の悪心・嘔吐、膣分泌・出血が見られた。

 今回の結果について岩瀬氏は、「なぜ低用量エストロゲン療法が有効なのかについて、作用機序は明らかになっていない。通常、エストロゲンはER陽性乳癌細胞の増殖を刺激し、アポトーシスを阻害するが、一定期間のエストロゲン枯渇療法後では腫瘍の遺伝子発現プロファイルが変化し、エストロゲンによるアポトーシスを誘導している可能性がある」と考察した。また、内分泌療法に無効となった閉経後乳癌患者へのEE2投与治療の位置づけについては、「ホルモン療法の最後の選択肢であると考えている」とした。

 今後は多数例、長期間の観察が必要であるとの認識を示しており、今回報告したフェーズ2試験を継続し、2年以内に合計65例の登録を目指している。今後のフェーズ2試験では、有害事象の結果を踏まえ、EE2投与量は3mgから開始し、1.5mgまで調整可能とする方針だ。