近年、悪液質の程度が軽度で可逆的な「Pre-chachexia」の段階での栄養サポートが注目されつつある。外来化学療法施行中の消化器癌患者を対象とした栄養サポートの効果の検討から、予後因子であるGlasgow prognostic score(GPS)が栄養サポート介入後に有意に改善したことが示された。10月25日から27日まで横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で、佐賀大学医学部地域医療支援学講座、一般・消化器外科の矢ヶ部知美氏が発表した。

 GPSは、英国のDonald C.McMillan氏が提唱した、CRPとアルブミンによる炎症をベースにした栄養状態の指標で、独立した予後因子であることが示されている。GPSでは、CRPを1.0mg/dL、アルブミンを3.5g/dLで各2群に分類し、CRP≦1.0mg/dLかつアルブミン≧3.5g/dLを0点(正常)、CRP≦1.0mg/dLかつアルブミン<3.5g/dLを1点(低栄養)、CRP>1.0mg/dLかつアルブミン≧3.5g/dLを1点(癌悪液質予備群)、CRP>1.0mg/dLかつアルブミン<3.5g/dLを2点(癌悪液質)とする。GPSが高くなるほど予後の悪化につながる。GPSと各種癌の治療成績・予後との相関については複数の報告がある。

 矢ヶ部氏らは、2010年より外来化学療法施行中の消化器癌患者に栄養サポートを開始しており、その効果についてGPSを用いて検証した。

 対象は、外来化学療法施行中に基準値以下のアルブミン低下またはグレード2以上の食欲不振を認めた時点から、6カ月以上治療継続可能だった消化器癌患者76人。

 栄養サポート開始前の前期群(2008-2009年)、栄養サポート開始後の後期群(2010-2011年)の2群に分け、初期値、3カ月後、6カ月後のアルブミン、CRPの値からGPSを算出し、比較検討した。
 
 前期群は44人(年齢中央値64.9歳、男性29人)、後期群は32人(同66.8歳、23人)となり、両群で癌腫に有意差はなかったが、前期群では大腸癌と胃癌、後期群では胃癌が多い傾向がみられた。PS、CTCAEによる有害事象のグレードにも有意差はなかった。

 同院では、外来化学療法を施行する患者の記録に化学療法モニタリングテンプレートを開発、運用しており、医師、看護師、薬剤師が情報交換に活用している。有害事象の情報に加え、基本検査項目についてもCTCAEに基づいてGradingするシステムとなっており、個々の患者に現在必要なエネルギー量や水分量なども明示される。

 同システムを利用してスクリーニングを行い、具体的な栄養サポートとして、アルブミン低下や食欲不振を認めた場合や患者から希望があった場合は、管理栄養士による個別相談を実施する。また家庭環境、身体・精神的な状況を考慮し、内服薬の調整、経口栄養補助剤の紹介、宅配食や訪問看護、介護サービスの導入など、多角的なアプローチを行っている。矢ヶ部氏は「単純な栄養サポートではなく、療養環境の改善が必要」と話した。

 検討の結果、アルブミンの初期値は前期群3.40、後期群3.16で差はなかったが、3カ月後は前期群3.36、後期群3.60(p=0.040)、6カ月後はそれぞれ2.98と3.53となり(p=0.014)、後期群で有意な改善が認められた。

 GPSの初期値は、前期群0.93、後期群1.09で、後期群で有意に不良だった(p=0.035)。しかし、3カ月後は前期群1.14、後期群0.38、6カ月後はそれぞれ1.45と0.66となり(いずれもp<0.001)、積極的な栄養サポートが実施された後期群において有意に改善した。

 悪液質は癌患者の20−80%に合併し、患者のQOLや予後と強く相関するとされ、消化器癌では悪液質の発生頻度が高い。矢ヶ部氏は「早期栄養サポート介入が、消化器癌化学療法における治療成績改善に寄与する可能性が示唆された。一時点の状態から予後不良と判断することには疑問を感じており、栄養サポートには力があることを検証していきたい」と述べた。

 本検討における全生存期間(OS)などの結果は、観察期間終了後に報告される予定である。