進行性腎細胞癌の治療に用いられているエベロリムステムシロリムスは、いずれもmTORを阻害するが、投与スケジュール、投与経路や薬物動態が異なるために、有効性と安全性は同様ではない可能性がある。今回、近畿大学泌尿器科学の野澤昌弘氏らは、2剤の有害事象プロファイルを比較検討した結果を、10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会で発表した。

 検討したのは、同院でエベロリムスを投与した43人、テムシロリムスを投与した22人で、うち10人は交代療法の一環として両薬剤の投与を受けていたため、評価可能だったのは55人。それぞれの薬剤の投与期間、相対用量強度と、臨床検査値異常や有害事象の発生率を比較した。

 エベロリムス投与群の年齢中央値は68歳、テムシロリムス群は70歳、男性の割合はそれぞれ70%と77%だった。淡明細胞癌だったのはエベロリムス群86%、テムシロリムス群77%。2カ所以上の転移があった患者はそれぞれ70%と77%だった。転移巣で最も多かったのは肺で、エベロリムス群81%、テムシロリムス群77%、続いて骨(それぞれ28%、50%)、リンパ節(それぞれ35%、50%)、肝臓(それぞれ23%、14%)だった。

 MSKCCリスク分類でFavorableリスクだったのは、エベロリムス群42%、テムシロリムス群18%、Intermediateリスクだったのはそれぞれ44%、50%、Poorリスクだったのはそれぞれ14%、32%だった。

 mTOR阻害薬がファーストライン治療だったのはエベロリムス群2%、テムシロリムス群23%。ファーストラインがVEGFRチロシンキナーゼでmTOR阻害薬がセカンドライン治療だったのはそれぞれ35%、32%。mTOR阻害薬がサードライン治療だったのはエベロリムス群60%、テムシロリムス群32%だった。

 エベロリムス群の投与期間は2.4カ月(範囲0.3-28.9)、テムシロリムス群の投与期間は1.8カ月(範囲0.2-8.3)、相対用量強度はそれぞれ71.6%と75.4%だった。治療中断理由は、病勢進行がエベロリムス群46%、テムシロリムス群40%、有害事象がそれぞれ41%、35%で、2群間で差はなかった。

 有害事象の発生頻度について検討した結果、エベロリムス群(39人を解析)に有意に多く見られた有害事象は、貧血(エベロリムス群95%、テムシロリムス群[19人を解析]74%)、高血糖(それぞれ74%、42%)、口内炎(それぞれ62%、26%)、間質性肺炎(それぞれ31%、5%)だった。グレード3の間質性肺疾患は、エベロリムス群15%だったが、テムシロリムス群には見られなかった。上記以外のあらゆるグレードの有害事象(検査値異常も含む)の発生率に差はなかった。

 グレード3以上の有害事象の発生率は、エベロリムス群が49%、テムシロリムス群は26%で、統計学的には有意な差ではなかった(p=0.1561)。

 野澤氏は、対象症例数が少なく、テムシロリムス投与例の解析対象者が増えると有害事象の発生頻度は変わる可能性はあるとした上で、同じmTORを標的とする2剤であっても薬剤特性の違いは有害事象プロファイルの相違の一因となる可能性が示唆されるとした。VEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が数多く登場していることで、今後、2剤が同じ治療ラインで使用される可能性があり、2剤を使い分ける上で有害事象プロファイルの違いは重要な情報となるだろうと語った。