IV期の進行非小細胞肺癌(NSCLC)で癌悪液質の患者のQOLや生命予後を検討した前向きコホート研究から、癌悪液質はQOL低下を引き起こし、予後に対しても大きな影響を及ぼすことが確認され、さらなる病態の解明に基づく予防と治療の必要性が示唆された。この結果は、「非小細胞肺がん患者の体重およびQOL等に関する臨床研究(TORG0912)」から明らかになったもので、10月25日から27日まで横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で、群馬県立がんセンター呼吸器科の湊浩一氏が発表した。

 癌患者では、体重減少が全身状態の悪化および予後不良を引き起こす可能性が示唆されている。しかし、癌患者の中で体重減少を呈する集団の背景因子や、癌患者における体重減少が具体的に全身状態にどのような影響を与えるかは不明である。

 そのため湊氏らは、IV期のNSCLC患者を対象として、臨床パラメータの経過、ならびに体重変化とQOL変化との関係を明らかにすることを目的として、多施設共同前向き研究を実施した。

 対象は、治療歴がないIV期のNSCLCで、ECOG PS 0-2の患者とした。初回の癌化学療法施行開始から1年にわたり、月1回、次の項目について調査した:体重、QOLについてはMDASI-J(Japanese version of the M.D. Anderson Symptom Inventory)およびQOL-ACD(The QOL Questionnaire for Cancer Patients Treated with Anticancer Drugs)、Karnofsky Performance Scale(KPS)、握力、臨床検査値(TP、ALB、CRP、ヘモグロビン、Ca、TG、IGF-1など)。

 2010年2月から7月までに全国から75施設が参加し、466人が登録された。観察完了例は406人となり、年齢中央値は67歳、男性280人(69.0%)、体重中央値は56.5kg、PS 0または1の患者が90.7%を占めた。

 結果として、QOLは体重減少により有意に悪化することが示された。観察期間中、体重減少率(最大値)が10.9%以上、6.1%以上10.9%未満、2.3%以上6.1%未満、2.3%未満となった患者はそれぞれ101人、101人、100人、104人だった。体重減少率の上昇に伴い、MDASI-JおよびQOL-ACDはより悪化した(それぞれp=0.0002、p<0.0001)。

 体重減少に関する単回帰分析では、KPS、握力、CRP、ALB、ヘモグロビンなどの変化にも有意な相関関係が認められた。

 生存期間中央値は、観察期間中に5%以上の体重減少を認めた患者(219人)で11.3カ月、5%未満だった患者(166人)では未到達で、体重減少が認められた患者で有意に短かった(p<0.0001)。

 湊氏らはさらに癌悪液質の症状を検討するとともに、癌悪液質の進行がQOL低下を招くとする仮説を検証した。

 主成分分析解析の因子負荷量から、癌悪液質と考えられる因子は「体重減少」「握力減少」「食欲不振」「疲労」と考えられた。これらの因子について、一般化推定方程式(GEE)を用いてQOLの経時データを解析すると、MDASI-Jの下位尺度では、症状の程度と日常生活の障害の有無、QOL-ACDの下位尺度では、活動性、身体状況、精神・心理状態、社会性について、いずれも有意に低下した(すべてp<0.01)。

 Evans氏らが提唱した癌悪液質の定義(Cachexia:A New definition、2008年)を用いて、癌悪液質の診断基準を「過去6カ月以内で5%以上の体重減少」に加え、「食欲不振」「疲労または倦怠感」「全身筋力低下」「臨床検査値異常」の4項目中3項目を満たすこととした。この基準に合致する癌悪液質患者(169人)と非悪液質患者(216人)の生存期間中央値は、それぞれ10.1カ月と未到達で、癌悪液質患者で有意に短かった(p<0.0001)。
 
 湊氏は「癌悪液質のさらなる病態の解明に基づく予防および治療の必要性が示唆された」と話した。