マグネシウム(Mg)補充によるシスプラチン(CDDP)関連腎障害の抑制効果について、単施設のレトロスペクティブな検討から、60mg/m2以上の高用量CDDP治療ではMg補充を行うことで、腎障害を軽減し、継続的な治療に貢献できる可能性が示された。10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で、近畿大学医学部附属病院薬剤部の木寺康裕氏が発表した。

 高用量(60mg/m2以上)CDDPの主な副作用である腎障害の予防方法として、水分負荷、利尿促進に加え、近年ではMg補充による効果が複数の臨床試験によって示され、NCCNテンプレートではMg補充が推奨されている。

 同院では、2011年7月より高用量CDDPレジメンにおいてMgの補充を行っている。CDDP投与日に、制吐剤の投与後、補液と20mEq MgSO4の投与を行った後、CDDP+生理食塩液500mLを投与し、その後補液と利尿剤の投与を行う。Mg投与量は、過去の報告から利便性と安全性を検討し、20mEqとされた。補液量はレジメンにより異なるが、2L以上とし、3日目までは1.5Lの補液を行っている。

 木寺氏らは、同院におけるMg補充レジメンによる高用量CDDP関連腎障害の抑制効果を検証した。検討項目は、高用量CDDP関連腎障害の発現頻度、Mg補充などの高用量CDDP関連腎障害に影響を及ぼす因子とした。

 対象は、腫瘍内科において60mg/m2以上のCDDPを初回投与する患者で、投与歴がある場合は6カ月以上経過していれば可とした。PSは0-2であることとした。調査期間は2008年1月から2012年8月までとし、初回投与例1コース中のグレード2(CTCAE ver4.0)以上の血清クレアチニン値増加を腎障害ありと定義した。

 対象は401人(年齢中央値65歳、男性308人)で、PS 2の患者は26人だった。最も多かった癌腫は肺癌の144人(36%)で、頭頸部癌の92人(23%)がこれに次いだ。

 401人中、腎障害ありは127人(31.7%)、腎障害なしは274人(68.3%)だった。両群において、CDDP投与量、CDDP投与前の血清クレアチニン値およびクレアチニンクリアランスに差はなかった。
 
 高用量CDDP関連腎障害に影響を及ぼす因子についての単変量解析では、腎障害の発現率を低下させる因子として、Mg補充(p<0.0001)、NK-1受容体拮抗薬の使用(p=0.0125)が抽出された。一方、腎障害の発現率を上昇させる因子として、PS2(p=0.0016)、食道癌(p=0.0034)が抽出された。
 
 多変量解析においても、Mg補充はリスク比0.1804となり、CDDP関連腎障害の発現リスクを低下させる因子である可能性が示唆された。腎障害の発現リスクを上昇させる因子としては、PS 2、食道癌(肺癌との比較)が抽出された。
 
 腎障害の発現率は、Mg補充を行った患者(67人)で6.0%だったのに対し、Mg補充を行わなかった患者(334人)では31.7%となり、Mg補充を行わなかった患者で有意に高かった(p<0.05)。さらに血清クレアチニン値の変動をみると、Mg補充を行った患者では、Mg補充を行わなかった患者と比べて有意に血清クレアチニン値の変動が抑制された(p=0.0123)。

 木寺氏は「Mg投与による有効性を示したエビデンスを構築することで、高用量CDDPの継続的投与が可能になる。Adjuvant settingの完遂など、治療効果の向上が期待できる」とした。