切除不能進行再発大腸癌(mCRC)で、BRAF V600E変異を持つ患者(以下、BRAF変異例)は全体の9%で、KRAS野生型のうちの15%を占めていることが示された。また、BRAF変異例はBRAF野生型と比べて予後不良で、PS 2以上、乳酸脱水素酵素(LDH)高値が予後不良因子として見いだされたが、これは野生型でも認められる因子だった。愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の近藤千紘氏が、10月25日から横浜市で開催された第50回日本癌治療学会学術集会で発表した。

 海外の報告では、mCRCのうちBRAF 600E変異を持つ患者は全体の約10%を占めること、野生型患者と比べて治療成績が不良であることが示されている。一方、日本では、BRAF変異mCRC患者の治療成績や予後因子は明らかにされていない。

 そこで近藤氏らは、BRAF変異mCRCの患者背景、治療成績、予後因子を検討した。

 対象は、病理標本が得られた患者のうち、同院で緩和的化学療法を実施したmCRC患者。mCRCにおけるBRAF変異例の割合の解析には、2009年1月から2011年12月までに1次治療を開始したmCRC患者を対象とした。BRAF変異例の治療成績と予後因子の検討は、2007年1月から2011年12月までのmCRC患者とした。遺伝子検査は、外科標本あるいは生検標本のホルマリン固定パラフィン包埋組織を用いた。解析対象の遺伝子は、KRASコドン12、13、61、BRAF V600E変異。

 検討の結果、mCRC 226人におけるBRAF変異例は全体の9%だった。KRAS野生型の中では15%を占めていた。詳しく見てみると、KRAS野生型かつBRAF野生型は全体の52%、KRAS野生型かつBRAF変異型は9%、KRAS変異型は36%、検体不良は2%だった。

 BRAF変異例27人とBRAF野生型142人の患者背景を比較した結果、組織型が低分化型の症例、原発部位が結腸、腹膜転移あり、CA19-9高値例がBRAF変異例で有意に多かった。

 BRAF変異例27人の1次治療レジメンは、mFOLFOXベースが16人、XELOXベースが2人、SOXベースが2人、FOLFIRIベースが1例、S-1ベースが1例、UFT/LVが1例だった。奏効率は22%、病勢コントロール率は59%だった。

 BRAF変異例は、BRAF野生型と比べ、有意にOS、PFSが不良だった。BRAF変異例のOS中央値は15.3カ月だったのに対し、BRAF野生型は29.6カ月、PFS中央値はそれぞれ3.5カ月、12.8カ月だった。

 さらに、BRAF変異例における予後因子を単変量解析した結果、PS 2以上、LDH高値が有意な予後不良因子として抽出された(ハザード比はそれぞれ5.05、6.47)。しかし、BRAF野生型との違いは見いだされなかった。さらに近藤氏は、「BRAF変異例は、BRAF野生型と比べ、低分化型、結腸原発、腹膜転移、CA19-9高値が多い特徴があったが、これらは明らかな予後不良因子ではなかった」とした。

 また、治療内容と予後について検討した結果、治療全ラインにおいて、ベバシズマブの使用は74%、イリノテカンの使用は52%、抗EGFR抗体の使用は52%であることが示された。また、1次治療においてベバシズマブの使用は52%、初回治療効果でSD、PDだったのは78%だった。単変量解析では、1次治療における治療効果がSD、PDだったことのみが有意な予後不良因子で、各薬剤使用の有無や2次治療の有無と予後の関連は認められなかった。

 近藤氏は、「BRAF変異例は、野生型と比べ、有意に予後不良だった。BRAF変異を測定できない施設もあると思うので、そういった施設では、患者背景や治療経過から早期に最適な治療を判断する必要があると思われる」とした。また、BRAF変異例に対する治療戦略について共同演者である同院の谷口浩也氏は、「原発巣を切除している間に状態が悪化し、化学療法が実施できない患者も存在した。イリノテカン導入率が50%ほどと低かったことから、いかにイリノテカンを活用するかという戦略が重要と考えている」とコメントしたほか、BRAF変異例への新規薬剤として現在開発中のBRAF阻害薬やMEK阻害剤による治療に期待を寄せた。