局所進行直腸癌に対するS-1を用いた術前の化学放射線療法(CRT)の有効性を検討した多施設共同フェーズ2試験(OITA研究)から、同治療は忍容性に優れ、有効である可能性が示された。10月25日から横浜市で開催されている第50回日本癌治療学会学術集会で、大分大学消化器外科の赤木智徳氏が発表した。

 局所進行直腸癌に対して、欧米では術前CRTが標準的に実施されている。日本においても同疾患への術前CRTは広がりつつあるが、その有効性は十分に示されてはいない。

 そこで赤木氏らは、2009年4月から2011年10月まで、局所進行直腸癌に対するS-1を用いた術前CRTの有効性と安全性を検討するフェーズ2臨床試験を実施した。試験の目的は、局所進行直腸癌における認容性を評価するもので、治療完遂率と安全性を検討した。

 治療プロトコールは、術前にCRTを5週間実施するもの。放射線療法(RT)は総線量45Gy/25frを5週に分け、1日1.8Gyを 5日間照射/2日間休止とした。化学療法は、患者の体表面積に応じてS-1投与量を1.25m2未満では80mg/m2、1.25以上1.50未満では100mg、1.5m2以上では120mgとし、5日間投薬/2日間休薬を2週間投薬/1週間休止/2週間投薬というスケジュールで行った。

 手術は放射線照射終了後、4-8週以内に施行。術式は、腹会陰式直腸切断術(APR)または前方切除で、前方切除では一時的回腸人工肛門の造設も含まれた。原則、直腸間膜完全切除(total mesorectal excision;TME) を施行した。手術直前または術中に、規定の画像所見で明らかな側方リンパ節転移が認められなければ、側方リンパ節郭清は行わないこととした。また、術後の補助化学療法については規定しなかった。

 患者の適格基準は、上部直腸(Ra)、下部直腸(Rb)、肛門管(P)に局在し、術前診断でT3-T4、N0-3、M0の狭窄症状がない局所進行直腸癌で、年齢20歳以上80歳以下。また、手術およびRT、化学療法の無施行例で、臓器能が保たれている症例とした。

 主要エンドポイントは治療完遂率で、2次エンドポイントとして安全性(有害事象発生割合、合併症発生割合)、組織学的効果、根治切除率(R0率)、奏効率を設定した。

 登録された37例の患者背景は、年齢中央値59歳(32−79歳)、男性が23例で、腫瘍径46mm(20-140mm)、深達度SS/Aが30例、SEが2例、SI/AIの他臓器浸潤が認められる患者が5例。リンパ節転移では、N0が10例、N1は18例、N2は8例、N3は1例だった。ステージについてはII期10例、IIIa期18例、IIIb期9例だった。

 術前CRT施行後手術までの期間の中央値は5.3週(2-12週)で、直腸切断術(APR)18例、定位前方切除術(LAR)13例、内肛門括約筋切除(ISR)3例、Hartmann手術2例だった。

 登録された37例の全例で術前CRTが施行されたが、1例に病勢進行(PD)が認められたため、手術施行例は36例だった。

 治療完遂率は、術前CRTにおける放射線総量との手術日までのS-1総投与量比(実投与量/予定投与量)を算出し、それぞれ75 %以上をもって完遂と定義した。その結果、全体の治療完遂率は86.5%(37例中32例、95%信頼区間:75.5-97.5)で、S-1の継続率は89.2%、RT継続率は94.6%だった。

 また、奏効率(CR+PR)は56.8%(37例中21例、95%信頼区間:40.8‐72.7)、組織学的効果判定(グレード2/3と定義)は48.6%(37例中18例、95%信頼区間:32.5-64.8)だった。なお、CRが2例含まれていた。

 グレード3以上の重篤有害事象は37例中4例(10.8%)にみられた。発生した有害事象のすべてがグレード3で、腸炎および貧血を発症した患者1例、血小板減少1例、白血球減少および好中球減少1例、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢を発症した患者1例だった。

 全体の治癒切除率は37例中35例で94.6%(95%信頼区間:87.3-99.3)であり、R0手術が高い割合で施行できていた。

 最後に赤木氏らは、今回の結果と、直腸癌に対する術前CRTの過去のスタディに照らし合わせて考察を行った。5FU+RT(50.3Gy)と5-FU+オキサリプラチンを比較したSTAR-01試験、カペシタビン+RT(45Gy)とカペシタビン+オキサリプラチン+RT(50Gy)を比較したACCORD12試験、5FU+RT(50.4Gy)と5-FU+オキサリプラチン+RT(50.4Gy)を検討したCAO/ARO/AIO-94試験の3つの試験と比較して、今回の検討における病理学的完全奏効(pCR率)は総じてやや低かった(OITA Trial 10.8% に対して上記3試験それぞれ17%:17%、13.9%:19.2%、13%:18%)。

 R0切除率は良好(94.6%に対してそれぞれ94%:97%、87.3%:92.3、92%:90%)で、病理学的奏効率(48.6%に対してそれぞれ56%:62%、28.9%:39.4%、38%:42%)および治療完遂率も(RT 94.6%:S-1 89.2:86.5%)は3つの試験とほぼ同等の結果だった。

 ただ、グレード3/4の有害事象の発生割合については、OITA-Trialでより少ない傾向が見られた(10.8%に対してそれぞれ8%:24%、10.9%:25.4%、22%:23%)。これについては、今回の検討ではS-1を用いていたことが反映しているのではないかと赤木氏は述べ、「局所進行直腸癌に対するS-1を用いた術前CRTは、有効かつ安全な治療であると考えられる」と結んだ。