卵巣癌に対し、プラチナ製剤を用いたファーストライン治療では、無増悪生存期間(PFS)は全生存期間(OS)の良好な代替エンドポイントとして機能することが示された。ただし、PFSを使用する場合の問題として、分子標的薬の評価、これらの薬剤による維持療法の評価、プラチナ感受性の再発以降や手術を含む治療での評価があり、改善幅の絶対値を事前に宣言するなど、何らかの工夫が必要と考えられる。10月27日から29日まで名古屋市で開催された第49回日本癌治療学会学術集会のDebate Session「抗悪性腫瘍薬第III相試験のエンドポイント」で、兵庫県立がんセンター腫瘍内科の松本光史氏が解説した。

 卵巣癌の化学療法に関する臨床試験において、ファーストライン治療とプラチナ感受性の症例に対するセカンドライン治療の生存期間中央値(MST)は2〜4年、SPP(survival postprogression)は1〜2年である。一方、プラチナ耐性の症例に対するセカンドライン治療のMSTは1年前後、SPPは8〜10カ月である。

 PFSとOSの扱いに関するワークショップが2006年に行われ、Gynecologic Oncology Group(GOG)が行った試験で検討された。プラチナ製剤が使用されたファーストライン治療のメタアナリシスでは、PFSとOSは良好に相関することが示された(R2=0.88)。松本氏は「その結果、プラチナ製剤が含まれるファーストライン治療ではOSのサロゲートとしてPFSを使用してよい、主要評価項目としてよい、と位置づけられた」と説明。

 さらに低毒性の維持療法、プラチナ感受性の症例に対するセカンドライン治療でも、PFSがほぼ標準となると結論された。ただし、可能な限り二重盲検試験とすること、評価タイミングを統一すること、評価基準を事前に設定すること、鋭敏に病態の増悪を反映するCA125の測定を考慮することなど、技術面での追及も課題とされた。

 松本氏は、主要評価項目をPFSとして実施された3件のフェーズ3試験を紹介した。
 
 GOG0218試験では、ファーストライン治療でTC療法(パクリタキセル、カルボプラチン)との併用、または併用から維持療法まで継続してベバシズマブを使用し、検討された。PFSは、TC療法とベバシズマブの併用、TC療法で有意差はなかったが、ベバシズマブを維持療法まで使用すると有意差が得られた(10.3カ月対14.1カ月、p<0.0001)。OSは未到達である。
 
 ICON7試験でも、ファーストライン治療でTC療法とベバシズマブの併用、維持療法が検討された。PFSで有意差が得られ、OSは未到達である。
 
 OCEANS試験では、プラチナ感受性の症例に対するセカンドライン治療として、カルボプラチンとゲムシタビンによる化学療法にベバシズマブを併用し、増悪まで継続した。ハザード比は0.484、PFSの中央値はベバシズマブの併用により4カ月延長した(p<0.0001)。OSは未到達であるが、ベバシズマブの併用による良好な結果が予測されている。
 
 肺、大腸癌以外の固形腫瘍におけるベバシズマブの有効性の比較では、PFSのハザード比は0.6〜0.85前後、OSのハザード比は0.85〜1.0前後であり、ほとんど差はない。松本氏は「主要評価項目をOSと宣言した試験はネガティブ、PFSと宣言した試験はポジティブになる。これは正しい判断と言えるのか」と指摘した。
 
 ベバシズマブ以外の分子標的薬も含むさまざまな「ポジティブ」な臨床試験の比較から、Tannockらは、OSなら3カ月、PFSなら4〜6カ月というように、p値だけでなく、事前に意味のある改善幅を宣言することを提案している。さらにPFSを用いる場合、毒性やQOLの情報は必須としている。
 
 松本氏は「プラチナ製剤を用いた初回化学療法に限定すれば、PFSはOSの良い代替エンドポイントとして機能した」と話した。そのうえで、現在のPFSの使用上の問題点として、ファーストライン治療における分子標的薬の評価、これらの薬による維持療法の評価、プラチナ感受性の再発以降や手術を含む治療での評価を挙げた。