切除不能・困難な大腸癌肝転移症例では、肝切除の施行は長期生存の可能性の必要条件であり、どこかのタイミングで肝切除を考慮すべきである。「肝への影響からみると、術前化学療法の奏効例では肝切除のタイミングを逃さずに切除を考慮すべき」―10月27日から29日まで名古屋市で開催された第49回日本癌治療学会学術集会で、千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学の吉留博之氏はこう話した。

 大腸癌肝転移に対する化学療法では、切除不能症例に対するConversion chemotherapy、切除適応の施設間の相違、微小肝転移を減らす可能性がある術前化学療法が議論されている。

 吉留氏らは、Conversion chemotherapyの効果と術前化学療法による影響を検討した。

 対象は、大腸癌肝転移症例で切除不能・困難と判断された45人(男性29人、年齢中央値63歳)。同時性肝転移は30人、異時性肝転移は15人だった。肝転移数は平均12.6個(範囲:1〜71)だった。切除不能の定義には、解剖学的に残肝量が不足する場合と、両葉多発のために残肝量が不足する場合とがあるが、結節数については中央値21個を対象とした。技術的に切除不能だった33人中、肝切除に移行可能となったのは20人(60.6%)だった。

 肝切除の適応は、正常肝予備能であれば残肝容積が35%以上とし、不足する場合は門脈枝塞栓術の併用または二段階肝切除を考慮した。腫瘍個数は残肝機能が十分に残れば制限しないこととした。

 技術的に切除不能で、Conversion chemotherapyで肝切除に移行可能となった20人中、ファーストライン治療で移行できた症例は17人(85%)だった。

 完全奏効(CR)が得られた患者はおらず、部分奏効(PR)が得られたのは27人で、奏効率は60%となった。安定状態(SD)となったのは13人だった。

 肝切除は45人中32人に行われた。進展していた患者が多かったため、拡大肝葉切除+部分切除、拡大肝区域切除+部分切除など、切除範囲が大きい術式が多く選択された。
 
 PRまたはSDとなった患者25人の生存期間は有意に良好となり、肝切除を付加することで予後の改善が得られた。一方、十分な奏効が得られないまま肝切除を行った患者の予後は、化学療法単独の患者とほぼ同様だった。
 
 吉留氏は、mFOLFOX6+セツキシマブの投与により、まず肝切除が可能となり、その後原発巣を切除した一例を紹介し、「切除不能・困難例では切除可能となった時点で切除することで、予後の改善が期待できると考えられる」と話した。
 
 さらに吉留氏は、他施設で長期の化学療法を施行後に紹介され、肝切除を行った患者で脾腫を経験したことから、Conversion chemotherapy施行後に肝切除を行った27人でその影響を検討した。投与期間が6カ月以内だったのは13人、6カ月を超えたのは14人だった。対照は、化学療法未施行で同時期に肝切除を行った患者48人とした。

 脾臓の容積は、化学療法を施行した患者で有意に増大し(p=0.04)、投与期間が6カ月を超えた場合に有意に増大していた(p<0.05)。イリノテカンベースのレジメンと比べて、オキサリプラチンベースのレジメンで投与期間が長期の場合に容積は増大した(p=0.05)。

 全例では脾臓の容積とICGR15、PLTなどの間に相関が認められたが、化学療法を行った患者に絞ると、これらの間に相関はみられなかった。したがって脾腫の因子には、肝臓に対する影響だけでなく、プラスアルファの因子の存在が考えられた。

 化学療法未施行で肝切除のみの患者と比較すると、化学療法を行った患者では、術後1日目のALT値と総ビリルビン値はやや高く、残肝はやや少なかったが、術後7日目の肝再生は約1.5倍残されていることが示された。症例数が少ないこともあり、いずれも有意差は認められなかった。