悪性腫瘍患者で静脈血栓塞栓症(VTE)を合併した患者のレトロスペクィブな検討から、PSの低下や複数の併発症を認める場合はVTEの合併を念頭においた診療が必要であり、他に原因がないD-dimerやCRPなどの急な上昇を認めた場合は、無症状であってもVTEの検索を行う必要があると考えられる。10月27日から29日まで名古屋市で開催された第49回日本癌治療学会学術集会で、杏林大学医学部内科学腫瘍内科/湘南中央病院消化器内科の廣川智氏が発表した。

 担癌患者ではVTEのリスクが高く、VTEを合併した場合は死亡率が上昇することが指摘されており、早期発見と対応が重要である。

 廣川氏らは、化学療法が適応となる進行癌でVTEを合併した患者を対象として、リスク因子や適切な診断手順を明らかにすることを目的として、レトロスペクティブに検討した。
 
 VTEの診断には、造影CT、カラードプラ超音波検査のいずれか、または両方を用いた。また、患者背景、症状、検査所見から、リスク因子および診断に至る経緯について、診療記録から検討した。

 対象は、2008年4月から2011年3月までに杏林大学医学部内科学腫瘍内科で治療を行った切除不能進行癌患者732人中、VTEを認めた46人(6.3%)。このうち男性は63%、年齢中央値は68歳だった。VTE診断時にPSが2、3だった患者は35%と21%で、全身状態が低下した患者が半数以上を占めていた。

 93%の患者が併発症を有し、腎機能低下・腎疾患が67%と最多で、高血圧の30%、糖尿病の26%、高脂血症の22%が続いた。併発症を2つ以上有する患者は59%だった。
 
 原発部位では消化器系が88%、組織型では腺癌が87%を占めた。化学療法の施行歴がある患者は63%だった。

 VTEの存在領域が複数に及んだのは39%だった。領域別では下肢領域が65%で最も多く、肺動脈領域の48%がこれに続いた。

 有症状の患者が半数を超えていたが、43%の患者は無症状だった。無症状の患者のVTEは腹部領域が86%で最も多く、肺動脈の45%がこれに次いだ。

 VTEの部位別に症状を比較すると、肺動脈では呼吸困難(50%)と胸痛(18%)、肺動脈を除く胸郭領域では頸部痛(71%)と浮腫(43%)と皮膚発赤(43%)、腹部領域では疼痛(14%)、下肢領域では浮腫(60%)と疼痛(35%)と皮膚発赤(11%)が多く、部位ごとに特徴が認められた。

 血清マーカーの変動率をみると、D-dimer上昇が95%で最も高く、次いでCRP上昇の74%が高かった。PT延長やAPTT延長などの凝固系の変動率は30%前後にとどまっていた。