シスプラチン(CDDP)投与例に対し、マグネシウム(Mg)を含む前投与法により腎障害抑制効果が認められることが示された。10月27日から29日まで名古屋市で開催された第49回日本癌治療学会学術集会で、愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の宇良敬氏が発表した。

 CDDPによる腎障害は重要な有害事象であり、Mg投与がCDDPによる腎障害抑制に寄与するという報告がある。

 宇良氏らは、米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のテンプレートを参考として、Mgを含む前投与法によるCDDPの腎障害抑制効果について、レトロスペクティブに検討した。

 ヒストリカルコントロールは、2006年4月〜2011年3月までに進行再発食道癌でCDDP 70mg/m2以上の5FU+CDDP療法を受けた患者とした。

 Cockcroft&Gault式によるCcr悪化に関する危険因子を抽出し、新旧レジメンについて、1コース中のCcr悪化に対する影響、次コースのCDDP減量・中止割合、抗腫瘍効果の比較を行った。

 旧レジメンのCDDP投与日の総輸液量は4450mLで、CDDPを生食500mLに溶解して投与した後、フロセミド20mgを投与し、マンニトール20% 300mL、乳酸リンゲル液1000mLなどを投与していた。

 一方、新レジメンでは、同日の総輸液量を2970mLとし、前投与薬として硫酸Mg 20mEqを含む生食1000mLを投与し、CDDPの投与直前にフロセミド20mgを投与する。

 旧レジメンで投与したヒストリカルコントロールの患者は339人、新レジメンで投与した患者は2011年1〜4月までに29人となった。患者背景で有意差がみられたのは、PS(p=0.015)、放射線治療併用(p=0.001)、アプレピタント併用(p<0.0001)だった。旧レジメンではPS 1が72%を占めたが、新レジメンではPS 0が62%だった。放射線治療を併用したのは、旧レジメンでは59%、新レジメンでは28%だった。アプレピタントを併用したのは、旧レジメンでは9%だったが、新レジメンは100%だった。

 Ccr悪化の危険因子について単変量解析を行うと、有意な因子として抽出されたのは、旧レジメン(p=0.0005)、女性(p<0.0001)、治療前Ccr値60mL/分以上(p<0.0001)、アルブミン値低下(p=0.0099)、NSAIDs併用(p<0.0001)だった。Ccr値については、ある程度Ccr値を維持できる患者で悪化の幅が大きくなると考えられた。

 Ccr平均値のコース中の推移をみると、旧レジメンではコース中に大きく悪化し、その後回復するものの、投与前の値までは回復しないことが示された。新レジメンではコース中に軽度悪化し、同程度の回復が示された。コース内のCcr悪化割合は、旧レジメンで33%、新レジメンで8%だった(p<0.00001)。

 投与前のCcr値は70mL/分前後だった患者が多く、Ccr値が30%以上悪化すると、次コース以降に腎毒性を理由としたCDDPの減量が必要になる頻度が増す可能性があると考えられた。そのためCcr値30%以上悪化の危険因子について多変量解析を行うと、女性(ハザード比5.892、p<0.0001)、治療前Ccr値60mL/分以上(ハザード比2.538、p=0.0325)が有意な因子となった。新レジメンのハザード比は0.043で、悪化の軽減に寄与すると考えられた(p=0.0005)。

 理由は問わない、または腎障害を理由とした次コース減量中止割合は、旧レジメンと比べて新レジメンでいずれも低下したが、対象数が少ないこともあり、有意差は得られなかった。宇良氏は「CDDPの減量・中止を抑制するにはMgを含む前投与法による腎機能障害抑制のみでは不足と考えられるが、今後検討する必要がある」とした。

 抗腫瘍効果への影響については、少数例の検討であったが影響はみられなかった。

 宇良氏は「Mgを含む前投与法による腎障害抑制効果については、治療継続性、強度維持に関してフォローアップが必要」と話した。