上皮性卵巣癌に対する初回化学療法において、好中球数減少が重篤な症例の無増悪生存期間(PFS)は良好であり、好中球数減少がprognostic markerとなる可能性が示された。10月27日から29日まで名古屋市で開催された第49回日本癌治療学会学術集会で、慶應義塾大学医学部産婦人科の野村弘行氏が発表した。

 上皮性卵巣癌において、最大残存腫瘍径が1cm未満のOptimal surgeryが行われた症例では臨床的に測定可能な病変が存在せず、初回化学療法施行中の効果判定は困難である。現時点では、有効な判定法は確立されていない。

 ただし、治療ターゲットとなる癌細胞が宿主細胞の特徴を反映していれば、化学療法に対する宿主細胞の反応から、治療効果を予測できる可能性があると考えられる。野村氏らは、上皮性卵巣癌の症例を対象に、初回化学療法時の血液毒性が治療効果を予測するprognostic markerとして機能するか否かを検証した。

 対象は、同院で初回手術(staging laparotomyまたはprimary debulking surgery)および初回化学療法(パクリタキセルとカルボプラチンの併用療法:TC療法)が行われ、臨床的完全奏効(CR)が得られた81人。

 病理組織型の内訳は、漿液性腺癌60人、類内膜腺癌21人となった。一般的な抗癌剤の感受性を勘案し、粘液性腺癌、明細胞腺癌は除外した。国際産婦人科連合(FIGO)の進行期では、I期4人、II期6人、III期56人、IV期19人だった。

 有害事象の評価はNCI-CTACE version 4.0に基づき、初回化学療法時の血液毒性(好中球数減少と血小板数減少の程度)と無増悪生存期間(PFS)との相関性を解析した。

 TC療法は21日を1サイクルとして、1日目にパクリタキセル180mg/m2を3時間かけて点滴静注し、カルボプラチンはAUC 6で1時間かけて点滴静注する。これを6サイクル繰り返すこととした。原則としてG-CSF製剤の予防的投与は行わず、使用する場合はASCOガイドラインを参考に、保険適応に従って投与することとした。

 観察期間の中央値は1209日だった。無再発群は30人、起算日を初回治療開始日とした1年以降の再発群は39人、1年未満の再発群は12人となった。
 
 無再発群と1年以降の再発群を予後良好群(69人)、1年以内の再発群を予後不良群(12人)とすると、好中球数最低値の平均は376/mm3対911/mm3となり、有意差が認められた(p=0.016)。好中球数減少のグレード1〜3と4の頻度は、予後良好群で29%と71%、予後不良群で67%と33%となった(p=0.015)。予後良好群で好中球数減少の程度が強く、グレード4となる頻度が高いと考えられた。
 
 一方、血小板数最低値の平均、血小板数のグレード4の頻度には、予後良好群と予後不良群で有意差はなかった。
 
 好中球数減少のグレード4群に占める割合は、予後良好群92%、予後不良群8%だった(p=0.015)。好中球数減少のグレード1〜3群とグレード4群のPFSをみると、中央値でそれぞれ455日と771日となり、グレード4群で有意に良好だった(p=0.0063)。
 
 PFSに関する単変量解析を行うと、FIGOの進行期、手術完遂度、好中球数減少がハザード比で有意差を認める予後因子として抽出された。
 
 これらの3つの因子についての多変量解析では、FIGOの進行期(ハザード比 3.940、p<0.01)、手術完遂度(ハザード比 2.155、p<0.01)、好中球数減少(ハザード比 2.017、p=0.02)が独立した予後因子となった。

 薬物代謝に関連した遺伝子上のSNPの有無が抗癌剤の奏効や耐性発現に関与すること、化学療法に伴う好中球数減少はSNPの有無と相関することが報告されている。野村氏は、「SNPの有無に基づく好中球数減少の程度が、測定可能病変を持たない術後化学療法の効果予測の指標となる可能性がある」と考察した。