術前化学療法(PST)を施行した乳癌術後患者の再発形式についての検討から、PSTの効果により最初の再発形式は明らかに異なり、病理学的完全奏効(pCR)では脳転移、non pCRでは肺・肝転移が多く、コントロールが予後の重要な要素となることが示された。10月27日から29日まで名古屋市で開催された第49回日本癌治療学会学術集会で、東京医科大学病院乳腺科の海瀬博史氏が発表した。

 PST施行後の乳癌術後の再発形式についての詳細な検討は少ない。海瀬氏らは、同科におけるPST症例の治療効果(pCR/non-pCR)による初再発形式と特徴を検討した。

 同科では、主要レジメンとして、FEC100(フルオロウラシル500mg/m2、エピルビシン100mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2を3週毎に4サイクル投与)またはEC(エピルビシン90mg/m2、シクロホスファミド600mg/m2を3週毎に4サイクル投与)に、パクリタキセル80mg/m2(毎週)またはドセタキセル75mg/m2(3週毎)を追加し、症例によりトラスツズマブも投与している。

 pCRの定義は「浸潤巣の完全消失」とし、乳管内成分の存在は問わず、リンパ節は評価対象に入れないこととした。

 対象は、2003年から2011年に同科でPST施行後に手術を施行した268人(年齢中央値51.7歳)。このうち閉経後の患者は140人だった。

 pCRの患者(pCR群)とnon pCRの患者(non pCR群)は、55人(年齢中央値54歳)と213人(同51.3歳)となった。pCR群ではHERタイプが占める割合が多く、HER2陽性は22人、サブタイプでもHER2は19人だった。non pCR群では63人と21人だった。

 再発と死亡の多変量解析では、再発ではステージ(p=0.0001)とプロゲステロン受容体(PR)(p=0.0332)、死亡ではステージ(p=0.0029)、pCR(p=0.013)、PR(p=0.0194)がそれぞれ有意な因子として抽出された。

 術前化学療法の効果別に初再発部位をみると、pCR群で5人中4人が脳転移、1人は乳房内再発だった。non pCR群では脳転移は1人のみで、効果による明らかな違いが認められた(p=0.0273)。non pCR群のその他の再発部位は、 肝転移6人、局所および骨が各4人、肺転移3人、胸膜転移1人だった。
 
  pCR群とnon pCR群の手術から初再発までの期間(DFI)をみると、2群とも平均約17カ月だった。

 再発症例における予後因子の検討では、診断時のステージ(p=0.0035)、再発後の転移臓器の数が2つ以上の場合(0.0032)が抽出された。

 術前化学療法の効果別に無病生存率(DFS)、全生存率(OS)をみると、曲線の前半部分が重なったため、pCRは予後に影響を与えないという結果となった(それぞれlog-rank p=0.6335、p=0.1949)。

 一方、診断時のステージはDFS、OSに影響し(それぞれlog-rank p<0.0001、p=0.003)、特にステージ3以上で予後は不良だった。サブタイプ別では、pCR率が高いトリプルネガティブが最も予後は不良で、次いでHER2が不良だった。これに対し、pCR率が低いLuminalは予後が良好だった(DFS、OSはそれぞれlog-rank p=0.0107、p=0.0086)。
 
 ステージの進行したnon pCR、サブタイプがHER2、トリプルネガティブのnon pCRの症例の予後は明らかに不良であることも示された。

 海瀬氏は「pCR症例では全身コントロールが良好なため、初発脳転移治療で予後を改善できる」と話した。また今後の課題として、non pCR症例に対する術後療法の検討、脳転移症例に対するトラスツズマブやラパチニブの投与方法の検討を挙げた。