がん拠点病院10施設における外来化学療法の実態調査で、看護師や薬剤師の負担は大きいものの、重篤な有害事象(SAE)の発生は少なく、安全に実施されていることが示された。厚生労働省「臨床試験登録症例の安全かつ適正な外来化学療法管理システムに関する研究」班の主任研究者である国立がん研究センター東病院呼吸器内科の後藤功一氏が、10月28日から30日まで京都市で開催された第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)のシンポジウム「外来化学療法の現状と問題」で報告した。

 同研究班による研究目的は、安全で適正な外来化学療法の管理システムの確立と、現在ほぼ入院で行われている未承認薬の早期臨床試験を外来で行うためのシステムを構築すること。平成21年度は、主要がん拠点病院10施設における外来化学療法の実態調査が行われた。

 調査の結果、外来化学療法の件数はどの施設でも近年増加しており、月平均の化学療法件数は7施設で1000件以上、3施設で1500件以上だった。国立がん研究センター東病院の場合、診療科別では消化器内科による外来化学療法が49%、乳腺の治療が主体となっている化学療法科が20%を占めた。

 外来化学療法センターの病床稼働率は中央値で1日に2件/床であり、看護師1人当たりの担当患者数は6.6人/日、薬剤師は18.5人/日の患者を担当していた。このため後藤氏は「安全かつ適正な外来化学療法の管理システムを構築するには、看護師、薬剤師の業務負担軽減が必須であり、コメディカルのマンパワー充実が急務である」と述べた。

 外来化学療法が原因と考えられる有害事象で入院治療が必要となったSAEの発生率は2〜3%で、「厳しい体制の中、外来化学療法が極めて安全に実施されていることが確認された」と後藤氏。SAEの内訳は、発熱性好中球減少、感染、食欲低下、下痢などが大半を占めていた。

 なお、SAEの発生件数を薬剤別にみると、S-1などの経口抗癌剤でも発生していることが確認された。この点については「通院治療センターを通らない経口抗癌剤の投与でも、安全管理システムが必要だろう」(後藤氏)としている。

 安全管理システムの1つの例として、国立がん研究センター東病院の通院治療センターでは、2008年12月から薬剤師や看護師による「外来化学療法ホットライン」を開設した。同病院薬剤部の古林園子氏はシンポジウムの中で現状を報告し、薬剤師による対応の安全性を示した。

 外来化学療法ホットラインでは、外来化学療法を行った患者からの電話に対し、薬剤師や看護師が相談に応じ、問い合わせ内容から緊急性を判断して、必要な場合は医師に対応を依頼するシステムとなっている。

 2009年1月から2010年3月までにホットラインを利用した患者は573人、のべ件数は1026件で、このうち薬剤師が対応したのは839件だった。相談内容は、発熱、疼痛、薬剤関連、悪心・嘔吐の順に多かった。また相談の中には経口抗癌剤に関するものも含まれていた。

 薬剤師による対応のうち、薬剤師の判断で回答したのは42%で、その9割は服薬指示や経過観察で解決可能なものだった。医師に確認して薬剤師が回答したのは32%で、このうちの61%は受診指示であり、古林氏は「ほぼ的確に緊急性を判断できている」と評価した。

 さらに、医師に対応を依頼したのは全体の24%で、「診療の効率化に貢献できていると判断できた」(古林氏)と総括した。