制吐剤適正使用ガイドラインに則って、NK-1受容体拮抗薬と第2世代5-HT3受容体拮抗薬、ステロイドを用いた制吐療法ならびに少量輸液によって、催吐性の強い抗癌剤であるシスプラチンを外来で使いこなせることが示された。埼玉県立がんセンター呼吸器内科の酒井洋氏が、10月28日から30日まで京都市で開催された第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)で発表した。

 シスプラチン療法は、悪心や嘔吐などの消化器症状が強く、さらに腎障害を予防するために大量の輸液が必要であり、これまでは入院での治療が基本だった。しかしNK-1受容体拮抗薬や第2世代5-HT3受容体拮抗薬といった制吐剤の進歩によって、外来での化学療法が可能になってきた。

 日本癌治療学会による制吐剤適正使用ガイドラインでは、シスプラチンのような高度催吐性リスク(催吐頻度>90%)の抗癌剤には、NK1受容体拮抗薬であるアプレピタントと第2世代5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンの3剤併用が推奨されている。

 そこで酒井氏らは、制吐剤適正使用ガイドラインに則って、3剤併用による予防的制吐療法と少量の輸液による外来シスプラチン療法を行った。輸液はシスプラチン投与の前後に各1000ml投与した。また第2日、第3日にはOS-1による経口補水を行った。

 対象は2009年4月から2010年7月までに、シスプラチンの併用療法を受けた肺癌患者90人。ドセタキセルとの併用が50人、ペメトレキセドの併用が22人、イリノテカンが9人、ゲムシタビンが5人、S-1が3人、アムルビシンが1人だった。

 投与時間の中央値は6時間20分で、輸液量中央値は2550mLだった。制吐剤として当初はグラニセトロンとデキサメタゾンだったが、2009年12月からはアプレピタントとグラニセトロン、デキサメタゾンを、2010年4月からはアプレピタントとパロノセトロン、デキサメタゾンが使用された。

 なお、1コース目は全例入院で治療され、入院日数中央値は10日で、2コース目の外来移行率は63%だった。

 これらの治療で、腎機能を示す血清クレアチニン値は6コース目まで変化がなかった。また遅発期の嘔吐はグラニセトロンを用いた3剤併用では9%、悪心が42%、食欲不振は65%だったが、パロノセトロンによる3剤併用では嘔吐は6%、悪心が38%、食欲不振は50%に見られた。

 以上の結果から、酒井氏は「NK-1受容体拮抗薬と第2世代5-HT3受容体拮抗薬、ステロイドによる制吐療法で、急性期の悪心・嘔吐はほぼコントロールされたが、遅発期の悪心・嘔吐のコントロールは不十分だった」とした。また「シスプラチン投与時の経口補水液を併用した少量輸液は忍容性があり、入院コスト削減と患者のQOL向上に寄与すると思われる」(酒井氏)と考察した。