現在の大腸癌肝転移に対する治療のパラダイムの限界として、肝外転移が制御できないことと肝再発率が高いことが、16年間に大腸癌肝転移で肝切除を行った症例の検討から示された。これらの限界を克服し、Cureを目指したパラダイムシフトが必要である。10月28日から30日にかけて京都市で開催された第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)のシンポジウム「大腸がん肝転移の治療戦略〜Cureを目指したパラダイムシフト〜」で、癌研有明病院消化器外科の斎浦明夫氏が肝臓外科医の立場から解説した。

 大腸癌肝転移に対する唯一の根治治療は肝切除であるが、切除可能例は15〜20%で、再発率は高い。5年生存率は30〜50%、Cureは4.5〜6%である。大腸癌肝転移においてパラダイムシフトが必要な理由は、このような肝切除の限界が立ちはだかる一方で、全身化学療法が進歩していることにある。

 東京大学医学部付属病院と癌研有明病院では、肝転移に対する基本方針として、肝転移個数に関わらず、安全に肉眼的治癒切除が可能であれば、初回・再発を問わず肝切除を行う方針をとる。斎浦氏らは、現在のパラダイムにおける肝切除の限界を検討するため、両施設における積極的肝切除を軸とした治療成績を検討した。

 対象としたのは、1993年1月から2008年12月までの16年間に、両施設において根治目的で大腸癌肝転移に対し初回肝切除を施行した736人。66歳以上が37%、同時性肝転移は48%、肝外転移は13%だった。肝転移個数の内訳は、1〜3個が67%、4〜7個が19%、8個以上が14%だった。

 残肝容積は30%を超えることとし、転移個数には無関係とした。術前補助化学療法は施行せず、術後補助化学療法には2004年よりUFT/ロイコボリン(LV)を使用した。肝再発は初回と同じ基準で再切除し、肺再発は3個以下で切除とした。

 肝切除は部分切除を基本としているため、葉切除以上は22%であった。出血量の中央値は530mL、肝切離断端陰性は89%だった。術後補助化学療法は28%に行われた。

 その結果、全症例の5年全生存率(OS)は51%となったが、5年無再発生存率(RFS)は21%で、再発率の高さが示された。

 多変量解析では、RFSの独立した予後不良因子は、肝外転移、肝切離断端陽性、肝転移個数が4個以上、異時性肝転移、CEA>200ng/mLなどだった。OSについての独立した予後不良因子は、肝外転移、肝切離断端陽性、肝転移が5cm以上、原発巣のリンパ節転移であり、肝転移個数は含まれなかった。

 肝転移個数が8個以上の患者の5年OSは33%であったが、個数が増加すると有意に再発率は上昇し、8個以上の患者の5年RFSは1.7%と極めて不良だった。

 再肝切除は全体の26%に行われ、積極的再肝切除の初回切除と同様の根治性が得られている。さらに3回目の切除は6.7%、4回目の切除は1.9%に行われ、適応例には複数回の切除が行われていた。

 現在のパラダイムの限界は、肝内病変は肝臓外科の技術で制御できても、肝外転移は制御できないこと、肝再発率が高いことである。これらの点を今後、パラダイムシフトで克服することが課題となる。

 斎浦氏は、「肝臓外科、腫瘍内科がともにCureを目指していくパラダイムシフトが必要。肝臓外科は化学療法後の肝切除の適応と安全性を確立し、腫瘍内科は肝切除を意識した治療を行うことが望ましい」と話した。