癌の疼痛に対する緩和目的の放射線治療は、患者の状態や予後、目標などから患者ごとに最適な治療を考える必要があるが、椎体の転移性脊髄圧迫により麻痺が出現した場合は例外で、48時間以内に緊急照射を行う必要がある。京都府立医科大学附属病院疼痛緩和医療部の坪倉卓司氏が、10月28日から30日まで京都市で開催された第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)で、緩和を目的とする放射線治療について解説した。

 近年、放射線治療技術の進歩や放射線治療が重要となる種類の癌の増加、低侵襲治療への流れ、高齢化社会の進行などから、放射線治療の役割が増大している。従来、放射線治療は各種の症状緩和に重要な役割を担ってきたことから、放射線治療は診断時から終末期医療まで、癌治療全般を幅広くサポートしていると言える。

 疼痛緩和を目的とする放射線治療の対象は、転移性骨腫瘍に伴う疼痛が最も多く、7〜8割の患者に疼痛の改善をもたらす。完全除痛率は3〜4割である。オピオイドが効きにくい神経障害性疼痛や突発痛にも有効とされ、原発巣や組織型などによる除痛効果の差は認められていない。ただし、肺癌や予後不良例などで効果が劣るとの見解もある。

 骨転移に対する放射線治療の適応は、腫瘍が存在し、かつ疼痛などの症状の原因となっていること、そして治療中に身体的および精神的に安静体位が保てることである。

 骨転移に対する照射スケジュールとして、国内では30Gy/10回/2週間が頻用される。ただし、最近の研究では、除痛効果と照射スケジュールに相関関係がないことが明らかになっている。6〜8Gyの1回照射でも除痛効果は同等に得られ、逆に長期予後が期待され、抗腫瘍効果も期待する場合は、40〜60Gyのスケジュールを用いる場合もある。

 除痛効果は照射開始後1〜2週で出現し、4〜8週後に最大効果が得られる。坪倉氏は「放射線治療は即効性に乏しいため、現在激しい疼痛がある患者には、まずは鎮痛剤で鎮痛を」と指摘した。放射治療は治療期間も要することなどから、早めに検討・紹介、または相談する必要がある。

 現状では、予後が限られる症例には、患者の負担の軽減と早期からの鎮痛効果を期待して、1〜数回の短期照射を考慮する。比較的長期の予後が期待される症例には、分割回数および総線量が多い治療を考慮することで、疼痛の緩和とある程度の腫瘍制御が期待できる。

 緩和目的の放射線治療では、照射範囲は限局され、総線量も少ないため、重篤な副作用の発現は稀である。副作用で患者にさらに苦痛を与えることは極力避けるよう計画される。根治が目的ではないため、休みを入れての治療でもよく、副作用が強くなれば治療を中止してもよい。

 ただし、緊急照射が必要なケースもある。椎体の転移性脊髄圧迫により麻痺が出現した場合で、48時間以内に緊急照射を行う必要がある。横断症状が完成してから48時間を超えると麻痺は固定し、放射線治療での麻痺改善率はゼロに等しくなる。癌の経過中に転移性脊髄圧迫が発生する頻度は5〜10%とみられている。

 麻痺に対する照射スケジュールはさまざまだが、運動機能改善率にスケジュールによる有意差はない。運動機能改善率は約3割と報告されている。

 緩和目的の放射線治療では、患者の状態、予後、目標、希望は多様であり、患者ごとに最適な治療を考える必要がある。坪倉氏は、「“一歩上を行く放射線治療”を行うためには、治療方針について主治医と十分相談し、麻酔科、精神科、在宅医、薬剤師、看護師などを含むチームとしての密接な連携が重要」と締めくくった。