子宮体癌に対し、da Vinci Surgical System(以下、ダヴィンチ)を使用した子宮全摘術と骨盤内リンパ節郭清術は、開腹手術と比べて手術時間は延長するものの、低侵襲で入院期間は短縮し、修練性の面でも期待される結果が示された。10月28日から30日まで京都市で開催された第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)で、東京医科大学産婦人科学教室西洋孝氏が発表した。

 近年、内視鏡手術の普及により、子宮癌に対しても腹腔鏡を用いた低侵襲手術が導入されるようになった。しかし、高度な技術と熟練が必要とされるため、一般に普及するまでにはいたっていない。

 西氏らは、米Intuitive Surgical社が開発したマスタースレイブ型内視鏡下手術用ロボットのダヴィンチと、その新しいバージョンで昨年11月に薬事法で承認されたda Vinci S Surgical Systemを使用して、子宮癌などに対し子宮全摘術を行っている。

 ダヴィンチの利点には、「3次元画像」「10倍の拡大視野」「直感的に両手指で操作でき、7自由度を持つ鉗子」「術者の手の動きを縮尺するスケーリング機能」「術者の手の震えを制御する機能」などがある。

 一方で、機器の大きさと重量、セットアップ時間、触覚の欠如、価格とランニングコスト、ライセンスの取得が必要、といった課題もある。

 世界的にダヴィンチの納入台数は増加しており、現在では1500台を超える。米国では、ダヴィンチ手術において子宮全摘術などの婦人科の手術が占める割合は、2007年には17%であったが、2008年には29.5%、2009年には33.7%に増加している。

 今回、西氏らが検討の対象としたのは、同施設の倫理委員会の承認のもと、患者の同意を得た、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮癌(T1)の患者43人。各症例のセットアップ時間、手術時間、ダヴィンチの使用時間、出血量、入院期間、郭清リンパ節数、learning curveなどを検討した。

 ダヴィンチを使用して子宮全摘術を行ったのは25人、子宮全摘術と骨盤内リンパ節郭清術を行ったのは17人だった。子宮全摘術では、セットアップ時間、手術時間、ダヴィンチを実際に使用するコンソール時間、出血量、入院日数は、16.6分、243分、181分、88.5ml、6.1日だった。子宮全摘術と骨盤内リンパ節郭清術では、16.9分、316分、252分、69.8ml、5.9日となった。

 現在同科では、4人の医師がダヴィンチを使用した手術を行っている。同一術者において、子宮体癌に対する子宮全摘術と骨盤内リンパ節郭清術を開腹手術で行った15人と、ダヴィンチを使用して行った9人のデータを比較すると、手術時間は198分と289分、出血量は602mlと27ml、入院日数は20.9日と5.8日、摘出リンパ節は28個と24個だった。

 修練性について、同一術者の子宮全摘術のlearning curveをみると、15件の観察期間において明確に短縮していた。まだ症例数が少ない子宮全摘術と骨盤内リンパ節郭清術でも、短縮する傾向がみられた。

 西氏は、「ダヴィンチは開腹手術と同等レベルの操作性を有し、修練性の面でも従来の腹腔鏡下手術とは明らかに一線を画すると感じられた」と話した。同科では、da Vinci S Surgical Systemを使用した子宮全摘術について、第2項先進医療に申請する予定である。今後は、広汎子宮全摘術や傍大動脈リンパ節郭清術も行う予定だという。