進行直腸癌に対する術前化学放射線療法は、欧米では標準治療に位置付けられているが、国内では有効性と安全性のエビデンスが十分得られていないことなどから、標準治療とされていない。今回、S-1イリノテカン(CPT-11)を用いた術前化学放射線療法のフェーズ1・2試験から、観察期間4年(中央値)の時点で骨盤内再発が抑制されており、本治療による手術への影響もほとんど認められないことが示された。10月28日から30日まで京都市で開催された第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)で、北里大学医学部外科学の佐藤武郎氏が発表した。

 進行直腸癌の治療として、欧米では直腸間膜全切除(TME)+術前化学療法、国内ではTME+側方郭清が行われている。術前化学放射線療法により局所再発率は低下するものの、生存率についてはエビデンスがなく、標準治療はまだ確立されていない。

 佐藤氏らは、術前化学放射線療法で進行直腸癌患者の生存率の改善を目指すとともに、手術操作への影響を検討するため、同施設のT3または4の局所進行直腸癌患者を対象として、フェーズ1・2試験を実施した。

 従前化学放射線療法は7日間を1サイクルとし、5サイクル施行した。S-1は80mg/m2を各サイクルの1〜5日目に投与、2日間休薬とし、3週目は休薬とした。CPT-11はフェーズ1試験で最大耐用量(MTD)および推奨量(RD)を決定し、80mg/m2を各サイクルの1日目に投与した。放射線は1日1.8Gで週5日、計25日間の照射を行った。照射部位は従来よりも範囲を狭めており、腫瘍から約1cmの領域をとっているが、側方領域には照射していない。

 術式は化学放射線療法施行前の治療計画にしたがい、低位前方切除術または腹会陰式直腸切除術を行った。

 観察期間の中央値は4.0年であった。フェーズ1・2試験でRD以下の投与を行った76人で組織学的効果をみると、grade1は27%、grade2は32.9%、grade3は39.5%となった。

 再発は76人中15人にみられた。その割合は、grade1で52.4%、grade2で12.0%、grade3で3.3%となった。再発率は病理学的完全奏効(pCR)のgrade3で特に低かった。

 再発部位は肝と肺が各7.9%、傍大動脈リンパ節が2.6%、全身転移が1.3%だった。現在までに骨盤内再発は認められていない。

 術前化学放射線療法に関する長期的な合併症は、吻合部と皮膚の瘻孔の1.3%のみであった。排尿障害や男性患者における明確な性機能低下は発現しなかった。死亡例は、癌の進行による死亡が2.6%、その他に心筋梗塞による死亡が1.3%だった。

 骨盤内再発は肛門機能障害から、患者のQOLの低下をきたす。佐藤氏は「今回、術前化学放射線療法により局所・骨盤内再発が抑制される結果が得られた。ただし、骨盤内再発が遅発化されている可能性もあり、さらに観察期間を要する。また、化学放射線療法による括約筋温存手術率の向上については今後の検討が必要」と話した。