切除不能な肝細胞癌に対する治療手段として、ソラフェニブによる全身療法と肝動注療法(HAI)をどのように位置付け、治療戦略を立てるか―。この課題について、日本から情報を発信するための臨床試験が開始されている。10月28日から30日にかけて京都市で開催された第48回日本癌治療学会のシンポジウムで、杏林大学医学部内科学腫瘍内科の古瀬純司氏が解説した。

 切除不能な肝細胞癌を適応として、日本ではソラフェニブが2009年5月に承認された。これにより、肝外転移も含め、肝動脈塞栓療法(TAE)や肝動脈化学塞栓療法(TACE)、ラジオ波熱凝固療法(RFA)といった局所療法の適応とならない患者に対する分子標的治療が標準療法として確立された。

 治療手段としてのソラフェニブは、巨大腫瘍や門脈腫瘍栓、肝外転移といった肝細胞癌が進行した段階に位置付けられるため、HAIと対象が重複する部分について、今後、どのように治療戦略を考えていくかが課題となる。

 HAIは高度門脈腫瘍塞栓などの腫瘍の縮小を目的とする症例に行われ、奏効率は約40〜50%と報告されている。しかし、大規模な臨床試験は行われてこなかったため、生存期間の延長を証明するエビデンスは存在しない。

 古瀬氏は「日本独自の治療開発や情報発信が求められている」と話し、HAIの生存期間に対する有用性を検証する2つの試験が日本で開始されていることを紹介した。

 まず、全身療法とHAIを比較するため、ソラフェニブによる全身療法とHAIを比較するフェーズ3試験が実施されている。

 そして標準療法へのHAIの上乗せ効果を検討するため、ソラフェニブによる全身療法とCDDPを用いるHAIとを併用するフェーズ1試験、そしてソラフェニブによる全身療法と5-FU+CDDPを用いるHAIとを併用するフェーズ1試験が進行中だ。

 現在、肝細胞癌の全ての段階に対する分子標的治療の開発が国内外で進められている。進行し肝外転移を伴う場合のファーストライン治療としてbrivanib、linifanib、これらのソラフェニブとの2剤併用が、セカンドライン治療としてbrivanib、S-1、RAD001、ramucirumabが、TACEとの併用でソラフェニブ、brivanib、TSU-68が、術後補助療法としてperetinoinやソラフェニブが検討されている。

 このうちTACEとソラフェニブの併用については、今年のASCO GIでPost TACE study of sorafenib in Japan and Koreaの結果が報告された。主要評価項目の無増悪期間(TTP)は、全対象では有意差が得られなかった。しかし、国別の検討では、日本人患者と比較して年齢が若く、B型肝炎が多く、早期の肝細胞癌が多く、TACEによる完全奏効(CR)率が高かった韓国人患者において、治療継続期間が2倍近く延長し、TTPが良好であった。

 したがって、TACEと分子標的治療を併用する際には、進行していない、腫瘍量の少ない症例に、TACE施行後に比較的早期に行うことで、より有効となる可能性あると考えられる。そして長期の治療継続と適切な副作用マネージメントを行うことで、有効性が得られることがわかっている。