EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)はEGFR遺伝子変異のある患者で奏効するが、EGFR野生型の患者でもEGFR-TKIが奏効することがある。その場合、HGF(肝細胞増殖因子)とVEGF(血管内皮細胞増殖因子)が患者層別化のバイオマーカーになる可能性のあることが明らかになった。金沢大学附属病院呼吸器内科の笠原寿郎氏が、10月28日から30日まで京都市で開催される第48回日本癌治療学会学術集会(JSCO2010)で発表した。

 笠原氏によれば、EGFR-TKI はEGFR野生型でも10%前後の奏効があり、病勢制御率は40%前後と言われている。そこで、EGFR-TKI治療を受ける前の肺腺癌患者の血清から、13 種類の蛋白(HGF、Amphiregulin、β-cellulin、EGF、EGFR、Epiregulin、FGF-basic、HB-EGF、PDGF-BB、PIGF、Tenascin C、TGF-α、VEGF)を測定した。

 解析対象となった95人のうち、EGFR-TKIで部分奏効もしくは病勢安定が認められた患者(PR+SD)は62人、病勢進行(PD)が33人だった。解析の結果、HGFとVEGFはPR+SD 群に比べてPD群で有意に高値だった。またEGFR野生型の23人においても、同様に、HGFとVEGFはPD群で有意に高値を示した。

 EGFR野生型の患者において、HGF高値群と低値群に分けたところ、HGF高値群のほうが無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に短く、HGFは予後不良因子であった。

 EGFR遺伝子変異を考慮した多変量解析では、PFSに関してHGFのハザード比は6.31(p<0.0001)、VEGFのハザード比は2.01(p=0.0165)であり、OSにおいてもHGFのハザード比は4.01(p<0.0001)と、有意な関連性が認められた。

 これらの結果から、笠原氏は「HGFやVEGFをバイオマーカーとして使用することで、EGFR野生型の中で、EGFR-TKI治療が有益となる患者を層別化することが可能になるだろう」と述べた。現在、新たな血清を用いたバリデーション試験を実施しているという。なおこの研究は、がん研究助成金「血液サンプルを用いた、難治性固形癌のがん薬物療法の効果予測因子の臨床的有効性の検討」班によるもの。