進行・再発乳癌において、S-1が安全で有効な治療法の一つとなる可能性が示された。10月22日から24日にかけて横浜市で開催された第47回日本癌治療学会学術集会で、慶應義塾大学医学部一般・消化器外科の関大仁氏が発表した。

 進行・再発乳癌の治療ではアントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤が主に使用される。しかし関氏らは、経口の5-FU系薬剤のS-1は投与が簡便で、心毒性や末梢神経障害、脱毛などの副作用が軽く、高いQOLを維持できると考え、進行・再発乳癌におけるS-1の有効性と安全性を検討することにした。

 対象としたのは2005年12月から2008年12月に同科でS-1を投与した進行・再発乳癌の患者20人(年齢中央値48歳)。観察期間中央値は54.6カ月だった。

 S-1の投与量は、体表面積に応じて40〜60mgを、1日2回、28日間投与後14日間休薬とした。治療の効果はRECIST基準に準じて判定した。

 病期別では、Iが30%、IIAが25%、IIBが20%、IIIAが10%、IIIBが10%、IVが5%だった。浸潤性乳管癌は85%、エストロゲン受容体(ER)陽性は70%、プロゲステロン受容体(PR)陽性は30%、HER2 3+が30%だった。再発部位は肺が最も多く(27%)、骨(21.6%)、リンパ節(18.9%)、肝(10.8%)と続いた。

 S-1の投与開始時期については、ファーストラインまたはセカンドラインの治療で投与された患者は全体の25%だった。再発後の前治療薬剤としてアントラサイクリン系薬剤かタキサン系薬剤のいずれか、または両方の使用歴がある患者は50%を占めた。

 奏効率は30%で、完全奏効3人(15%)、部分奏効3人(15%)だった。長期の安定状態(long SD)は2人(10%)、安定状態(SD)は7人(35%)、進行(PD)5人(25%)だった。臨床上の有用性(clinical benefit)は40%となった。

 治療成功期間(TTF)の中央値は4.9カ月だった。

 S-1の投与時期別では、ファーストラインまたはセカンドラインの治療でS-1を投与した患者では奏効率80%(CR 40%、PR 40%)となり、サードライン治療以降に投与した患者の同13.4%(CR 6.7%、PR 6.7%)と比べて有意に高かった(p=0.004)。再発の早い段階でS-1を投与した症例で奏効率が良好となることが示された。

 また、S-1投与時期別のTTFの中央値は、ファーストラインまたはセカンドラインの治療で投与した患者では21.4カ月、サードライン治療以降で投与した患者では3.4カ月で、再発の早い段階でS-1を投与した場合にTTFが延長する傾向が認められた。

 ERの発現別では、ER陽性の奏効率21%(CR 7%、PR 14%)に対し、ER陰性では同50%(CR 33%、PR 17%)で、有意差はなかったもののER陰性でS-1の奏効率が高い傾向が認められた。

 また、アントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤の使用歴がない患者の奏効率は50%(CR 33.3%、PR 16.7%)で、使用歴がある患者の同21%(CR 7%、PR 14%)と比べてS-1の奏効率が高い傾向にあった。
 
 再発部位によるS-1の奏効率の差は、今回の解析では認められなかった。

 副作用については、グレード4のものはなく、グレード3では下痢3人(16%)と食欲低下1人(5%)のみであった。

 「再発の早い時期にS-1を投与した症例では有意に奏効率が良好であった。また、ER陰性、アントラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤の使用歴がない症例でS-1の奏効率が高い傾向が認められた。今後も症例を蓄積していきたい」と関氏は話した。