シスプラチンの投与は、腎機能障害の可能性や強度の催吐作用があることから入院管理下で行われるが、初回投与時の悪心・嘔吐がグレード2未満で、輸液量や悪心・嘔吐対策を中心とした適切な支持療法が行われれば、外来で安全に投与できる可能性が示された。10月22日から24日に横浜市で開催された第47回日本癌治療学会学術集会で、国立がんセンター東病院化学療法科の松原伸晃氏が発表した。

 シスプラチンとゲムシタビンの併用療法は膀胱・腎盂尿管癌の標準治療の一つ。近年、外来での化学療法が積極的に行われるようになってきたが、シスプラチンを含むレジメンについては、通常、入院で行われる。シスプラチンの投与時には腎機能障害を予防するための大量輸液と利尿剤による強制利尿が必要なことと、シスプラチンに強度の催吐作用があるためだ。

 松原氏らは、膀胱・腎盂尿管癌に対し、外来でシスプラチンとゲムシタビン併用療法を行った症例をレトロスペクティブに解析して安全性と忍容性を検討し、その結果に基づいた外来でのシスプラチン投与に向けた取り組みを紹介した。

 解析の対象は、2003年1月から2008年12月に膀胱・腎盂尿管癌と診断され、シスプラチン50mg/m2とゲムシタビン1000mg/m2の併用療法を受けた65人中、外来で投与を行った20人(うち男性18人、年齢中央値62.9歳)。患者の病期は術前・術後が13人、転移・再発が7人だった。20人の総サイクル数は61。

 シスプラチンとゲムシタビンの投与は1日目に行い、同日の総輸液量は約3500ml、点滴には約8時間30分を要した。

 平均血清クレアチニン値の経過をみると、開始前は0.96mg/dL、8日目は1.08mg/dLで、腎機能低下により化学療法の延期・減量が必要となった症例はなかった。

 初回投与時の悪心・嘔吐がグレード2未満では、緊急外来の受診および入院はなかった。1サイクル目にグレード2以上の悪心・嘔吐で緊急外来を受診したのは3人(4.9%)、緊急入院したのは1人(1.6%)、だった。緊急外来を受診した3人とも4、5、6日目に受診していた。2サイクル目以降はグレード2以上の悪心・嘔吐の発生頻度は減少し、緊急外来の受診および入院はなかった。

 このような結果から松原氏らは、輸液量や悪心・嘔吐対策を中心とした支持療法に改善の余地があると考えた。欧米での輸液量やNCCNのガイドラインを参考に、総輸液量を約2500mlに減量、点滴に必要な時間を約6時間5分に短縮し、悪心・嘔吐対策として副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン)を2〜4日目、消化性潰瘍治療薬(ラフチジン)を1〜7日目に投与し、抗菌薬(レボフロキサシン)を38℃以上の発熱時に内服する新しい投与スケジュールを考案している。 

 泌尿器系の癌では片腎や水腎症の症例も多いため、松原氏は「シスプラチンを含むレジメンを外来に移行するためには、今後も検討すべき事項は多い」と話した。国立がんセンター東病院では、膀胱・腎盂尿管癌に対するシスプラチンとゲムシタビンの併用療法の外来投与における安全性と忍容性を確認するフェーズ2試験を計画しているという。