術前化学療法を行った乳癌の場合、術前がN0なら、センチネルリンパ節生検の偽陰性率は低いようだ。10月22日から24日に横浜市で開催された第47回日本癌治療学会学術集会で、関連2演題が発表された。

 一つは、広島市立広島市民病院の伊藤充矢氏の発表。1999年から2007年の間にセンチネルリンパ節生検(SN)を行った乳癌患者1400人について、術前化学療法後にSNを行った175人(NAC群)と、術前化学療法を行わずにSNを行った1225人(非NAC)を比較した。SNの適応は、腫瘍径が3cm以下で臨床的リンパ節転移陰性とし、NAC群は、術前化学療法後にSNの適応に合致している。

 同定率はNAC群で86.9%、非NAC群で94.9%とNAC群で低かった。偽陰性率はNAC群3.4%、非NAC群3.2%と同等だった。術前化学療法前のリンパ節への転移状況で分けてみると、N0の51人では偽陰性例がなかった。N1では58人中2人、N2〜N3では66人中2人が偽陰性だった。

 もう一つは、慶応義塾大学包括医療センターの高橋麻衣子氏の発表。2001年1月から2009年8月にNAC後に腋窩郭清を伴うSNを行った原発性乳癌(ステージ2、3)の78人について検討をした。

 同定率は93.6%(73人)で、偽陰性率は19.4%(36人中7人)だった。術前化学療法前のリンパ節への転移状況で分けてみると、同定率には差がなかったが、偽陰性率はN0で5.9%(17人中1人)、N1〜N2で31.6%(19人中6人)と、N0で有意に低かった(p=0.05)。また、臨床的治療効果で分けると、完全奏効の27人では偽陰性率0%(8人中0人)、完全奏効ではない51人では同25%(28人中7人)と、完全奏効の場合に偽陰性率が低い傾向が見られた(p=0.11)。

 早期の乳癌では、SNで転移がなければ腋窩郭清を行わないことがガイドラインでも推奨されている。一方で、手術不能な乳癌に対する治療法として始まった術前化学療法後におけるSNの有用性については、明らかなエビデンスがないのが現状だ。

 二人の演者は、「長期予後が不明のため十分な検討が必要」としながらも、術前にN0であれば、術前化学療法後のSNは正確に行える可能性を示唆しているとした。