癌の領域では国内最大の学会、日本癌治療学会の学術集会が、10月22日から24日に横浜で開催される。演題数は2000を越え、各臓器別の議論はもちろんのこと、放射線治療や化学療法、分子標的薬から、副作用対策や緩和ケアの問題に至るまで、横断的な幅広い議論が繰り広げられる。学会長を務める杉山徹氏にお話をうかがった。


――学会のテーマは「がん治療への目線」となっていますが、その意図は。
杉山 医療者だけではなく、患者や家族、行政、企業といったそれぞれの目線から、癌治療の現状と変化について、開かれた議論をしようというのが目標です。学会は「学会のための学会」であってはならない。将来のがん治療の発展には患者目線も必要と考えます。
 ほかの癌関連学会とも連携し、共催のセッションを多数設けました。シンポジウムやパネルディスカッションの座長も、基本的には外科系から1人、内科系から1人にお願いしています。学会の枠、学科の枠を超えて議論ができるような組み込み方に努力しました。

――演題数は2000を越えたとのことですが、今年の演題の傾向や見所は。
杉山 大腸や胃、食道などの消化器系の癌、乳癌に関する演題が多いようです。メジャーな癌であり、治療が大きく変わりつつあるからでしょう。また分子標的薬については、多くのセッションを設けました。今後の癌治療の目玉となるのは間違いありませんが、誰にでも効くというわけではなく、功罪もあります。否定的な意見の方にもご登壇いただいて議論したいと考えます。最終日には、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会、日本がん分子標的治療学会との共催で、「がんのバイオマーカーと分子標的薬」と題する、いわば、まとめのシンポジウムを用意しました。

――最優秀演題の選考も、今年から始まりました。
杉山 ポスター発表優秀演題とは別に口演の中から10演題を最優秀演題として、特別枠で発表してもらいます。選ばれた演者は、来年のASCO(米臨床腫瘍学会学術集会)を取材していただき、リアルタイムに学会のホームページ上でレポートしてもらいます。その旅費を学会が補助します。

――今回の学術集会に、患者さんを招待するという試みも初めてですね。
杉山 参加費の免除、交通費や宿泊費の助成というスカラーシッププログラムを設けました。正式導入は日本の医学系学会では初めてのようです。応募できるのは、癌患者団体や支援団体に所属する人、国や都道府県のがん対策推進協議会のメンバーなどです。定員50人のところ、100人を超える応募がありました。選考に苦慮しましたが、癌患者団体活動の充実のためにも、有益な試みになることを期待しています。

――2日目には、特別企画シンポジウムとして「がん医療改革に向け、学会と患者が共にできること」があります。
杉山 患者や行政の方々も登壇します。このシンポジウム開催を前に、学会会員に対するアンケート調査を行いました。2007年6月に国の「がん対策基本法」が施行されて2年以上経ちますが、医療の現場では実際に何が変わったのか、あるいは変わらないのかが、浮き彫りになることでしょう。1日目の特別企画シンポジウム1「がん対策基本法に基づくがん医療は変わったか?2年間を振り返る」でも、がん対策基本法の法制化にご尽力された行政刷新担当相の仙谷由人氏らをお招きし、癌診療の均てん化がどこまで達成できたかを議論し、提言が出せればと考えます。