乳癌患者へのアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法による血管痛について調査した結果、2コース目で初めて血管痛が出現する患者が多く、一度血管痛が出現すると次回からは継続して発生し、コース数を重ねるごとに出現率が高まることが示された。一方、治療コースを重ねても血管痛のグレードは上昇しておらず、グレード1のみが増加する傾向が確認された。

 外用鎮痛薬を処方された患者では、痛みの指標であるNRS値が低下したことから、がん研究会有明病院の橋場朋子氏は、「今後は、痛みを予測した患者指導や外用薬の使用を積極的に提案していきたい」と語った。2月17日まで金沢市で開催された第27回日本がん看護学会学術集会で発表した。

 同院の外来治療センターでは、化学療法を受ける患者の大半はアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法(CAF、AC、CEF療法)を受ける。この際に、「触ると痛い」「ひきつった感じ」といった苦痛を訴える患者が多いという。

 血管痛を引き起こす要因として、薬剤のpHが影響すると考えられている。CEF療法で使用されるエピルビシンはpHが2.5〜6.0と低いため、投与時に血管壁は酸にさらされ、血管内膜刺激から静脈炎が発症し、血管痛や硬結などの症状をきたす一因となると言われている。一方、AC、CAF療法で用いられるアドリアシンはpHが5.0〜6.0と中性に近いが、血管痛の訴えは多く聞かれるという。

 そこで、橋場氏らは、同院における乳癌患者でのアントラサイクリン系薬剤を含む化学療法による血管痛の実態と、日常生活に及ぼす影響について調べた。

 対象は2012年4月から7月までに、アントラサイクリン系薬剤を含む補助化学療法を受けた乳癌患者64人。補助化学療法の内訳は、CAF療法が20人。AC療法が22人、CEF療法が22人。

 電子カルテ情報を用い、血管痛の有無、NRSによる痛みの評価、CTCAE ver.4.0による血管障害のグレーディング、日常生活へどのような影響を及ぼしているか、血管痛に対する薬剤処方の有無――に関する情報を収集。コース毎の血管痛の出現率、血管痛の度合い、日常生活に及ぼす影響を解析した。

 血管痛が初めて出現した時期を見ると、1コース目が4人、2コース目が26人、3コース目が14人、4コース目が3人となり、2コース目で初めて血管痛が出現する人が最も多かった。

 CAF療法、AC療法、CEF療法の3つともに、1コース目ではほとんどの患者において血管痛が出現しなかったが、一度血管痛が出現すると、その後のコースでも継続して血管痛が出現し、コース数を重ねるごとに血管痛の出現率が高まった。特に、エピルビシンを含むCEF療法については、8割の患者で2コース目以降に血管痛が出現しており、CAF療法、AC療法と比べ、出現率が高いことが分かった。

 また、治療コースを重ねても血管痛のグレードは上昇しておらず、グレード1のみが増加する傾向が確認された。

 日常生活に及ぼす影響については、「荷物を腕にかけると痛い」が19%(12人)、「腕を伸展すると痛い、つっぱる」が44%(28人)、「日常生活に支障はない」が16%(10人)だった。

 NRS中央値については、コース数を重ねても明確な増強は見られなかったが、全例でNRS値の評価が実施できなかったことから、橋場氏は「より正確な値を得るためにも、NRS値を用いた痛みの程度を評価することは重要」と話した。

 CEF療法でボルタレンテープ、ロキソニンテープ、ロキソニンゲル、リンデロン軟膏などの鎮痛薬が処方されていたのは36%(5人)だった。これら薬剤介入を行った患者では、痛みの指標NRS値の低下が確認された。一方、外用鎮痛薬が処方されていない患者では、NRS値の低下は見られなかった。このことから橋場氏は、「血管痛に対して、これらの外用薬を処方することで効果があるのではないか」と語った。

 全ての結果を踏まえ橋場氏は、「今回の調査ではCAF療法、AC療法、CEF療法の全てにおいて血管痛が生じることが明らかになった。今後は、痛みを予測した患者指導や外用薬の使用を積極的に提案していきたい」とした。現在、外用鎮痛薬をどのようなスケジュールで塗布することを推奨するかについて検討している。