佐々木研究所附属杏雲堂病院看護部の下田愛衣氏は、電話相談で外来化学療法患者が発熱を訴えた際に、看護師が統一した指導を行えるようにするための発熱対応フローチャートを作成したと報告した。2月17日まで金沢市で開催された第27回日本がん看護学会学術集会で発表した。

 同院では、2010年4月から外来化学療法室を開設している。外来化学療法を受ける患者からの電話相談には、主に看護師と薬剤師が対応している。電話相談は、発熱や疼痛、下痢などの身体症状が中心で、とくに発熱の相談が多い。好中球減少時の発熱は急速に重症化し、生命の危機につながる恐れがあるが、発熱時にどのような対応をするかといった標準化した看護手順は作成されていなかった。

 そこで下田氏らは、電話相談において患者が発熱を訴えた際に、緊急受診が必要かについて看護師が統一した指導ができるよう、看護師用の発熱対応フローチャートの作成を試みた。また、発熱対応フローチャート導入時の看護師に対する教育方法について検討した。

 看護師用の発熱対応フローチャート作成にあたっては、電話相談のあった外来化学療法患者の基本情報、レジメン、電話相談内容を抽出。さらに、日本臨床腫瘍学会が作成している発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドラインを参考にし、発熱の定義を腋窩温38度から37.5度以上に変更したほか、抗菌剤の事前処方を中止した。

 外来化学療法患者の基本情報を解析した結果、2010年10月から12月までに外来化学療法を行った件数はのべ304件、電話相談があったのはのべ54件(18%)。患者の平均年齢は58.2±13.2歳(範囲:33-79歳)だった。再発・進行癌の患者が72%を占め、癌種別では乳癌が最も多く33%、泌尿器癌が18%、婦人科癌が14%、消化器癌が11%と続いた。

 2010年10〜12月に電話相談があったうち、発熱を訴えた患者の割合は17%、2012年10〜12月では30%を占めた。

 看護師用の発熱対応フローチャートは、37.5度以上の発熱が見られた時期について、「治療実施24時間以内」「好中球減少時期(day5〜14)」「上記以外」の3つの大項目に分類し、患者への対応を図式化した。

 具体的には、「治療実施24時間以内」に37.5度以上の発熱が見られた場合、まず、(1)咳、息苦しさ、(2)嘔吐、下痢、食事や水分が摂れない、(3)疼痛、(4)普段の生活ができない、声に張りがない、(5)ぼーっとしている――などの症状があるかを確認する。これらの症状があった患者のうち、スパイク発熱である、脱水症状があり、経口摂取できないなどの場合は、感染症の可能性があるため緊急受診を勧める。一方、経口摂取が可能だが、随伴症状が複数ある場合も受診を促すこととした。上記症状はないが、分子標的薬を使用している患者の場合は、インフュージョンリアクションの可能性があるためアセトアミノフェン(カロナール)の使用を推奨する。

 「好中球減少時期(day5〜14)」での発熱についても、まず、(1)咳、息苦しさ、(2)嘔吐、下痢、食事や水分が摂れない、(3)疼痛、(4)普段の生活ができない、声に張りがない、(5)ぼーっとしている――などの症状があるかを確認する。これらの症状があった場合は、感染症の恐れがあるため、緊急受診とする。一方、上記症状がなかった場合、発熱性好中球減少症の恐れがあるため、同様に緊急受診を勧める。

 「上記以外」の発熱についても、まず(1)咳、息苦しさ、(2)嘔吐、下痢、食事や水分が摂れない、(3)疼痛、(4)普段の生活ができない、声に張りがない、(5)ぼーっとしている――などの症状があるかを確認し、これらの症状が見られた患者のうち、スパイク発熱である、脱水症状があり、経口摂取できない場合は、感染症の可能性があるため緊急受診を勧める。一方、経口摂取が可能だが、随伴症状が複数ある場合は受診を促すこととした。一方、上記症状がないが、NSAIDsやアセトアミノフェンの定期内服を忘れていた場合は、腫瘍熱の可能性があるため、NSAIDsやアセトアミノフェンの内服を推奨。道中または静脈ポート周辺の発赤や腫脹、疼痛がある場合は、ポート感染の可能性があるため受診を促すこととした。

 看護師用の発熱対応フローチャートを今後実臨床に導入するにあたっては、導入前に看護師への教育が欠かせないことも確認された。導入前に看護師に対して行う教育内容としては、癌患者の特徴、発熱の定義、発熱原因の鑑別のための知識(好中球減少時、好中球減少を伴わない発熱)、発熱性好中球減少症の定義と特徴、発熱性好中球減少症のリスク評価、局所の感染症状、使用する抗癌剤の理解(nadirの時期)、中心静脈ポートの管理方法、発熱時の看護――を挙げた。

 今後について下田氏は、発熱対応における教育を看護師に対して実施した上で、発熱対応フローチャートを臨床現場に導入し、評価を行う方針だ。