化学療法によりグレード2以上の末梢神経障害が出現した肺癌患者であっても、自ら工夫することで日常生活動作に影響がないと考えてしまっている患者が多い実態が明らかとなった。症状に合わせて患者個々で工夫して日常生活の中で末梢神経障害に対処している可能性が示唆された。2月16日から金沢市で開催された第27回日本がん看護学会学術集会で、金沢大学附属病院の竹中栄伸氏が発表した。

 化学療法時の神経障害には、中枢神経系、自律神経系、末梢神経系の障害のほか、味覚・嗅覚障害などがあるが、中でも末梢神経系の障害が多いとされている。肺癌の化学療法においても末梢神経障害が出現する可能性があるため対処が欠かせないが、末梢神経障害に対する治療も看護ケアも確立されていないのが現状だ。

 そこで竹中氏は、肺癌化学療法時に見られる末梢神経障害が、日常生活動作へどのように影響を与えているのか、さらには患者がどのように末梢神経障害に対処しているのかという実態について調査した。

 調査にあたっては、看護師が、理学療法士、作業療法士と協力し、末梢神経障害評価表、日常生活動作アンケートを独自に作成。CTCAE v4.0を用い、グレード別に末梢神経障害を点数化して評価した。

 対象は、2009年4月から2011年8月に同院呼吸器内科で化学療法(シスプラチン・カルボプラチン・パクリタキセル・ドセタキセルを用いた単剤または併用療法、ゲフィチニブ、エルロチニブ)を行った肺癌患者20人(男性16人、女性4人、平均年齢61.5歳)。そのほとんどが切除不能症例だった。このうち、末梢神経障害は55%の患者(11人)で出現したため、この11人について詳細な解析を行った。
 
 末梢神経障害の程度は、グレード1が4人、グレード2が3人、グレード3が4人だった。

 末梢神経障害に対する対処方法について聞いたところ、「内服薬を飲む」と回答した患者が最も多く7人だった。「痺れのある部位をマッサージする」は5人、「転ばないように気を付けて歩く」や「低く、はきやすい靴を選ぶ」といった転倒に注意して歩行している患者が4人、「ウォーキングで1日4km散歩する」「ペットボトルを使って手の運動をする」など手足の運動をしている患者が4人、「足の痺れに対し、靴下を履く」や「足を電気毛布や布団であたためる」など保温を行っている患者が3人だった。

 さらに、末梢神経障害が日常生活動作へどの程度影響しているかについて調べるため、「歯磨き」や「タオルを絞る」、「ひもを結ぶ」といった複数の日常動作について「問題なし」「やや困難」「中程度困難」「かなり困難」「不可」の5段階で評価してもらった。その結果、グレード2以上の人であっても多くの日常動作において「問題なし」と回答する人の割合が高いことが明らかになった。

 この結果について竹中氏は、「末梢神経障害は、徐々に出現するもので、仕事や家事などの生活に影響しない限りは注目されにくい。軽度障害の場合は注意すれば生活可能なため、日常性活動作に問題ないと回答した患者が多かったのではないか」と指摘した。一方で、「痺れがあったため動かなかったら筋力が衰えた」といった二次障害出現によるADL低下が見られた患者がいたことから、患者個人の生活背景、環境、副作用の受け止め方によって末梢神経障害に対する苦痛の受け止め方に差があったと考えられると考察した。

 また日常生活に問題ないと回答した患者であっても、症状出現以前のような生活が困難となっているケースもあったことから、患者個々で症状に合わせて工夫して生活している実態が推測された。

 さらに、看護師から末梢神経障害について説明を受けたと回答した患者は少なかったことから、竹中氏は「化学療法前に説明しても時間の経過とともに忘れてしまう可能性や、看護師間で末梢神経障害に対する意識に差がある可能性も考えられる。今後は、末梢神経障害について看護師から意識的に説明することが求められ、副作用の説明だけでなく、日常生活に応じた指導を考慮する必要がある」とした。

 最後に竹中氏は、同院でこれまでに使用していた化学療法を受ける患者向けの資料において、末梢神経障害に関する説明を増やす作業を進行中であることを紹介。同院では、これまでに化学療法を受ける患者向けの資料を使用してきたが、吐き気や食欲不振など化学療法開始初期に見られる有害事象に対しては対処方法を記載しているが、末梢神経障害に対する対処方法の記述は少ないという。今後は、化学療法で使用する薬剤別に出現しやすい末梢神経障害についてまとめ、その対処方法まで記載する方針だ。