外来化学療法を受療中の患者が、電話相談で「しんどい」と訴えた場合に、その対応に看護師が苦慮する要因を分析した結果、「電話での情報収集が難しい」「緊急性の判断が難しい」「電話対応でケアを提供する難しい」ことの3つが考えられた。この結果から神戸市立医療センター西市民病院の大路貴子氏は、「電話相談では、患者が不安に思っていることを知ろうとする姿勢や傾聴とともに、患者の全身状態を判断するアセスメント能力が求められる」と強調した。2月16日から金沢市で開催された第27回日本がん看護学会学術集会で報告した。

 同院外来化学療法センターでは、患者からの電話相談の際に「トリアージシート」を使用し、アセスメントを行っている。

 2010年度の電話相談件数は154件だったが、発熱、嘔気に次いで「しんどい」という訴えが多かった。「しんどい」という項目はトリアージシートに記載されていないため、その対応や判断に苦慮することがあったという。

 そこで大路氏らは、外来化学療法を受けている患者から「しんどい」という訴えがあった際に、看護師がその対応に苦慮する場面と要因を明らかにするための調査を行った。

 まず、2010年に電話相談してきた患者のうち9人について、トリアージシートに記載された内容から看護師のアセスメントや対応についてのデータを抽出した。さらに、化学療法センターのスタッフ間で、これまでに電話相談で「しんどい」と訴えてきた患者についての振り返りカンファレンスを行い、逐語録を作成。これを基に、患者の倦怠感の判断に苦慮した理由や背景、アセスメントに関する内容を抜粋し、コード化した。

 トリアージシートに記載された内容をもとに分析した結果、看護師は患者が「しんどい」と訴えてきた際に、化学療法の副作用が主な要因か、またはがんの増悪や原疾患由来かについてアセスメントしており、緊急受診の必要性があるかについて判断していたことが分かった。受診を勧める場合は来院手段の確認、主治医への連絡や受診手続きを行っていた。また、緊急性がない場合にも、不安があれば再度電話するよう勧めたり、内服抗癌剤の一時的な休薬を提案するなどしていた。

 また、振り返りカンファレンスによる解析の結果、患者の「しんどい」という訴えに看護師が苦慮した要因は大きく3つのカテゴリーに分類でき、「電話での情報収集の難しさ」「緊急性の判断の難しさ」「電話対応でケアを提供する難しさ」だった。

 苦慮要因の1つである「電話での情報収集の難しさ」については、患者が「しんどい」としか表現しないことや、患者がうまく症状を表現できていないのではないかといった看護師側の戸惑い、どのようにしんどいのかを聞き出す最適な言葉が分からない、患者が何を求めているのかその真意が分かりかねるといった意見が挙がった。これに対する解決策として大路氏は、「患者に現状を語る力がどの程度あるかを見極めることが必要で、患者が話しやすい雰囲気を作る対話スキルが必要。また患者の発する言葉の表面上だけでなく、患者の不安や医療者に聞いてほしい事柄は何かを理解しようとする姿勢が重要」と強調した。

 2つ目の苦慮要因である「緊急性の判断の難しさ」については、緊急性の判断はその看護師の経験に基づく指標で行われており、重症度の判断に苦慮している実態が分かった。また、来院手段の判断に迷うことや、今受診しても症状の改善が期待できそうにないなど予想される治療の限界を感じてアドバイスに苦慮していることも明らかになった。こうした状況については「しんどいという症状を引き起こす状況や問題を予測できるよう、化学療法レジメンだけでなく、個々の患者の病気の進行状況や病態の理解が重要。患者の家族背景や住居が分かる情報ツールを整備することも有用」とアドバイスした。

 また、3つ目の苦慮要因「電話対応でケアを提供する難しさ」については、「患者に大丈夫という安心感を提供しきれなかった、患者の生活を支援することが重要」といった意見が挙がった。これに対して大路氏は、「しんどいといった倦怠感を仕方のないことだととらえるのではなく、患者や家族の思いをくみ取る姿勢を大切に、日頃から患者や家族と信頼関係を築くことが重要」と語った。