乳癌患者において、患者に上肢の機能や状態を観察・認識させ、医療者と患者が話しあって訓練内容の調整などを行うことで、術後の上肢機能障害を予防・改善できる可能性が示された。2月16日から金沢市で開催された第27回日本がん看護学会学術集会で、東北大学がん看護学分野の佐藤冨美子氏が発表した。

 乳癌患者において、リンパ節郭清に伴い、リンパ浮腫や肋間上腕神経の傷害による痛み、大胸筋・小胸筋・神経の損傷によって起こる肩関節可動域制限、筋力の低下、皮膚のひきつれ感などが起こる可能性があり、術後の上肢機能障害の予防改善に向けた介入の必要性が示唆されている。

 佐藤氏は、2009年に、米国University of California San Franciscoで開発されたセルフケア理論に基づく症状マネジメントモデルを参考に介入プログラムを作成しており、介入プログラムの長期効果の評価を、術前から術後3年まで計10回行うことを計画した。今回、術後1年までの上肢機能の検証結果を発表した。

 介入プログラムは、(1)患者・家族が術前に上肢機能障害の定義や機序、現れ方について理解し、術後には腫脹や痛み、肩関節可動域の制限、筋力低下、知覚鈍麻、皮膚のひきつれ感の有無を観察し、リンパ浮腫の予防、肩関節可動域の制限による運動障害を予防する知識を習得させること、(2)医療者が患者と共に上肢症状を観察し、回復の経過や訓練について話し合うこと、(3)術後1年までに少なくとも6回、医師・看護師・理学療法士・作業療法士による介入を行うこと――を目的として作成した。

 東北地方のがん診療連携拠点病院を受診した、初発乳癌で腋窩リンパ節郭清を受ける可能性がある30歳以上の女性176名を調査し、腋窩リンパ節郭清術を受けて、術前、術後1週間、1カ月、3カ月、6カ月、1年の調査に参加した44例を分析した。うち、介入群28例、比較対照群16例だった。

 介入群は、UCSF症状マネジメントをもとに作成した「乳癌体験者の術後上肢機能障害予防改善に向けた介入プログラム」を受け、比較対照群は施設の医療者が通常行っているケアを受けた。2群の割り付けは対象者の選択によった。

 対象患者の背景は、2群間で有意な差はなく、平均年齢が介入群50.8歳、比較対照群52.4歳、配偶者ありが介入群75.0%、比較対照群62.5%、就業ありが介入群35.7%、比較対照群43.7%、育児ありが介入群21.4%、比較対照群6.3%、介護ありが介入群10.7%、比較対照群0%、乳房術式が全摘術だったのは介入群60.7%、比較対照群43.7%、リンパ節郭清範囲がI、II、IIIが介入群21.4%、57.2%、21.4%、比較対照群18.8%、50.0%、31.2%だった。

 術前化学療法を受けていたのは介入群35.7%、31.3%、術後化学療法を受けていたのは介入群25.0%、比較対照群18.7%。放射線療法を受けていたのは介入群60.7%、比較対照群81.3%、ホルモン療法を受けていたのは介入群82.1%、比較対照群75.0%、術側利き手だったのは介入群57.1%、比較対照群31.2%、術前に肩疼痛が認められたのは介入群17.9%、比較対照群18.8%で、いずれも2群間で有意な差は認められなかった。

 乳癌体験者の術後上肢機能障害に対する主観的認知尺度(SPOFIA)について検討した結果、比較対照群に比べて介入群は術後の時間が経過するに従って上肢機能の改善がより顕著になり、比較対照群との差は開いていった(反復測定による二元配置分散分析による)。SPOFIAは、腫脹、肩関節可動域の縮小、痛み、知覚、鈍麻、筋力低下、皮膚のひきつれ感に関する15項目を「あり」「なし」で点数化して評価する指標だ。

 また、上肢障害評価表(DASH)について検討した結果、比較対照群に対する介入群の上肢障害の改善は、経時的に改善するものではなかったが、3カ月後、6カ月後、1年後とそれぞれの時点では比較対照群に比べて介入群の方が良好な結果が得られた。DASHは、腕の能力に関する30項目について、「全く困難なし」から「できなかった」までを5段階で評価する指標だ。

 これらのことから、術後1年までのプログラムによる介入は、乳癌体験者の上肢機能障害改善効果が術後3カ月以降から認められるとまとめた。今後、長期介入効果の検証を行う予定だ。