肺癌に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している頻度は38.4%と高く、合併例は非合併例に比べて生存率が有意に低いことがプロスペクティブ研究で確認された。千葉大学先端化学療法学の滝口裕一氏らが、4月20日から神戸市で開催された第52回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。

 肺癌でCOPD(肺気腫や慢性気管支炎)を合併していると、外科手術が難しく、術後合併症が起こりやすい、化学療法や放射線療法の妨げになるなどの問題がある。

 肺癌とCOPDの合併頻度の調査は、COPD患者において肺癌発症リスクを調べる場合と、肺癌患者においてCOPD合併リスクを調べる場合がある。

 前者に関して、米国のプロスペクティブ研究で、非喫煙者44万8600人を対象に、20年間の追跡調査を行った結果、慢性気管支炎および肺気腫がある人の肺癌発症リスクは2.44倍と報告されている。

 後者に関しては、滝口氏らによるレトロスペクティブな解析で、肺癌患者383人においてCOPDの診断基準である1秒率(FEV1/FVC)70%未満の患者は23.9%であった。組織型では扁平上皮癌患者では33.8%、腺癌では13.9%、小細胞肺癌では48.4%だった。

 滝口氏らはまた、治療前の原発性肺癌患者256人を対象に、胸部HRCT(高分解能CT)、呼吸機能検査によるプロスペクティブな検討を行い、低線量肺癌CT検診受診者(以下、健常者)947人と比較した。

 その結果、1秒率70%未満の患者割合が、健常者群は4.2%だが、肺癌患者群は38.4%と有意に高かった。肺気腫病変を示す低吸収領域(LAA)スコア1以上の患者割合も、健常者群は17.1%だが、肺癌患者群では58.2%だった。性別や年齢、喫煙率で調整しても同様の傾向を示した。

 肺癌患者のうち、気腫所見のみの患者は79人(30.9%)、IP(間質性肺炎)所見のみが29人、気腫+IP所見のある患者が70人(27.3%)で、いずれのCT所見もない患者は78人と、3分の1しかいなかった。組織別にみると、気腫+IP所見群では扁平上皮癌が32.9%、非扁平上皮癌が67.1%だが、IP所見のみの群では扁平上皮癌が13.8%、非扁平上皮癌は86.2%であった。

 生存率を比較すると、CT所見のない群に比べて、気腫+IP所見群の生存率は有意に低く(p=0.0012)、気腫所見のみの群もCT所見のない群やIP所見のみの群に比べて生存率は低かった。

 滝口氏らによる千葉COPD肺癌スクリーニング研究会では、千葉市住民検診として、COPDをタグ(目印)とする肺癌検診を進めている。住民検診や会社検診の問診票からCOPD罹患の疑いがある人を抽出し、スパイロメトリーとCTでCOPD患者を絞り込む。定期的なCOPDの評価と肺癌検診を行い、肺癌の早期発見と治療につなげる試みだ。平成22年度には胸部X腺検査受診者8万9100人のうち、COPD診断基準に該当したのは1.3%であった。