EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象としたNEJ002試験のQOL解析から、初回ゲフィチニブ治療群では初回化学療法群よりもQOLが有意に維持されていることがわかった。4月20日から22日まで神戸市で開催された第52回日本呼吸器学会学術講演会で、北海道大学第一内科の大泉聡史氏が、北東日本研究機構(NEJ)を代表して発表した。

 NEJ002試験では、IIIB/IV期または術後再発で化学療法の治療歴がない患者をゲフィチニブ群とカルボプラチン/パクリタキセル群(以下、化学療法群)に無作為化割付し、ゲフィチニブ群でPFS、奏効率が改善したことが報告された(Maemondo M, et al. N Engl J Med 2010;362:2380-2388)。

 EGFR遺伝子変異陽性のNSCLCについては、NEJ002試験を始めとするフェーズ3試験において、初回EGFR-TKI治療が従来の化学療法を凌駕する高い効果をもたらすことが報告されてきた。しかし、プロトコル治療後のクロスオーバーにより、初回EGFR-TKI治療群と化学療法群に全生存期間(OS)の有意差はみられていない。

 このような状況の中、QOLや症状の改善はNSCLCの治療における重要な目標であり、NEJ002試験でも副次的評価項目の一つとされている。大泉氏らは、NEJ002試験における初回ゲフィチニブ群と初回化学療法群のQOLの差を評価、報告した。

 QOLのアセスメントでは、プロトコル治療中に患者がケアノートブック(がん患者用QOL調査票)にベースラインおよび毎週のQOLを記載し、評価した。ケアノートブックは3つの上位尺度である、症状、精神面、生活面からなり、症状は10項目、精神面は6項目、生活面8項目の下位尺度で構成される。各項目は10点満点で、10点に近いほど、症状と精神面は悪く、生活面では良い。

 QOL解析の主要評価項目は、症状、精神面、生活面において、疼痛と息切れ、不安感、日常活動がベースラインから9.1%(ケアノートブックで1段階)増悪するまでの期間とした。

 本解析の対象は、ゲフィチニブ群72人(主解析の63%)、化学療法群76人(同69%)となった。両群で患者背景に差はなかった。
 
 ベースラインの各項目の平均点数には、ゲフィチニブ群と化学療法群に有意差はみられなかった。

 QOL解析期間は、クロスオーバーによる影響を排除するため、化学療法群のPFS中央値を考慮し20週とした。

 主要評価項目が9.1%増悪するまでの期間(中央値)は、疼痛と息切れでは、ゲフィチニブ群8.87週、化学療法群0.86週、ハザード比(HR)は0.34で、ゲフィチニブ群で有意に延長した(p<0.001)。不安感では、ゲフィチニブ群は未到達、化学療法群8.87週、HRは0.72で有意差はなかった(p=0.14)。日常活動では、ゲフィチニブ群12.9週、化学療法群1.84週、HRは0.43で、ゲフィチニブ群で有意に延長した(p<0.0001)。

 さらに同じ3つの尺度が27.3%増悪(より重篤なQOL増悪)するまでの期間を比較すると、不安感も含め、いずれもゲフィチニブ群で有意に延長していた。

 QOLの各項目の変化を改善、安定、悪化に分けた比較でも、ゲフィチニブ群で症状(食欲不振、便秘、疼痛と息切れ)と生活面(日常活動、社会活動、こころ)が有意に良好だった。

 大泉氏はケアノートブックの回収率については反省点としたうえで、「既報告のPFS延長のメリットもあることから、EGFR遺伝子変異陽性のNSCLCにおいては初回ゲフィチニブ治療を考慮すべき」と話した。