呼気中の有機成分で、肺癌患者の予後が予測できる可能性のあることが示された。呼気ガスで評価できれば、侵襲性が低い評価法の1つになる。大阪大学呼吸器・免疫アレルギー内科学の木田博氏らが、4月20日から神戸市で開催された第52回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。

 呼気中には約3000種類の揮発性有機成分があるといわれる。木田氏によれば、癌患者の呼気中には独特な有機成分の濃度パターンがあることが報告されているが、その物質は特定されていない。そこで肺癌患者と慢性呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎)患者を区別する呼気中の揮発性有機成分が検討された。

 対象は、肺癌患者31人、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者12人、間質性肺炎(IP)患者13人、および健常者33人(全員女性、平均年齢27.4歳)。肺癌患者の平均年齢は69.3歳、非小細胞肺癌が25人(ステージ3が5人、ステージ4が20人)、小細胞肺癌が6人(限局型が2人、進展型が4人)。

 起床時の呼気ガスを採取して、ガスクロマトグラフ質量分析器で、揮発性有機成分を測定した。

 解析の結果、肺癌に特徴の6種類の揮発性有機成分が検出された。物質間の相関性を求めたところ、カルボン酸を含む3種類、アルデヒドの2種類は、それぞれ共通の代謝経路から産生された可能性が高いことが示された。

 次に呼気中カルボン酸とアルデヒドの比率として、酢酸(Acetic acid)/デカナールとプロピオン酸/デカナールを求めた。群間で比較した結果、肺癌群でのみカルボン酸/アルデヒド比が高かった(p<0.05)。しかし健常者、COPD患者、IP患者を対照群としたROC解析では、AUC=0.70であり、「カルボン酸/アルデヒド比の予測能は低い」ことが示された。

 このため肺癌患者を健常者や慢性呼吸器疾患患者と区別するには、「前向きの検討や使用するカルボン酸、アルデヒドのさらなる検討が必要」とした。

 ただし、肺癌患者において、呼気中の酢酸濃度を中央値で2群に分けた結果、低濃度群では予後不良であることが示された(Log-rank検定 p=0.0341)。この結果から、「酢酸は進行肺癌患者の予後指標となる可能性がある」とした。
 
 木田氏は、「最初は肺癌診断を考えていたが、今回の結果から治療効果や再発予測になる可能性が示された」と述べた。また呼気ガスを用いて、肺結核患者における抗結核薬の効果についても検討しているという。