肺癌症例に対するシスプラチンレジメンでは、点滴時間を短縮するshort hydration法の導入により、従来のレジメンと比較して短時間投与が可能となり、有害事象の増加や治療完遂率の低下は認めず、安全に外来で施行可能であることが示された。4月20日から22日まで神戸市で開催された第52回日本呼吸器学会学術講演会で、順天堂大学呼吸器内科の小山良氏が発表した。

 シスプラチンを用いたレジメンでは、マグネシウム投与による腎保護作用や少量の輸液でも腎保護が可能であることが報告され、さらに制吐剤などの支持療法の進歩により経口補液が可能になり、short hydration法を用いたレジメンが実地臨床で行われるようになった。

 順天堂大学病院でも2011年2月以降、症例を選択してshort hydration法を用いたレジメンによる外来治療を行っている。小山氏らは、この方法を用いたレジメンによる外来治療の安全性について、レトロスペクティブに検討した。
 
 対象として、2010年7月から2012年4月までにシスプラチンベースのレジメンで初回化学療法を行った症例を2群に分けた。short hydration法を用いたレジメン群(A群)は25人、従来のレジメン群(B群)は44人となった。A群は年齢中央値60歳、男性17人、B群はそれぞれ61.5歳と28人で、病期、組織型などに差はなかった。
 
 従来のレジメンでは、1日目の総点滴量は2658mL+α、点滴時間は9時間55分で、2、3日目の総点滴量は1500mL、点滴時間は6時間。一方、short hydration法を用いたレジメンでは、1日目の総点滴量は2158mL+α、点滴時間は4時間55分となり、2、3日目は点滴は行わない。支持療法として、1日目から3日目までアプレピタントを投与する。
 
 さらにshort hydration法では2、3日目にデキサメタゾンも経口投与する。1日目から3日目までは飲水量を1000mL以上/日とし、経口補液OS-1を推奨している。1日の飲水量を患者に必ず記載させている。1サイクル目は必ず入院で行い、詳細に観察して適応と考えられる患者について外来導入としている。
 
 short hydration法の適応基準は、70歳以下、PSは0または1であり、心エコーで左室収縮機能低下(駆出分画50%以下)、拡張障害、肺高血症(40mmHgを超える)などは除外される。
 
 レジメンでは、シスプラチン+ペメトレキセドが両群で各11人に投与され、シスプラチン+ドセタキセルは臨床試験が行われた関係もあり、B群のみ11人に投与された。4サイクル以上施行した症例を治療完遂と定義すると、治療を完遂したのはA群では22人(3人は治療継続中)中17人、B群では44人中29人で、治療完遂率はそれぞれ77.3%と65.9%だった。

 有害事象として血球減少と消化器毒性を認めたが、両群に有意差はみられなかった。グレード3以上の悪心と食欲不振は、A群で各8%、B群で18.2%と20.5%だった。
 
 クレアチニン値は、治療前、1サイクルの治療経過中、次コース前において、両群に差はみられなかった。

 小山氏は、入院と外来で化学療法を行った場合の費用の概算も示した。シスプラチン+ペメトレキセドの併用化学療法1サイクルを入院5日間で行う場合は、DPC包括点数の標準点数58884点に各施設の係数を掛けた値となる。外来で行う場合は薬剤費のみの概算だが、標準点数の23207点になる。シスプラチン+ペメトレキセドの併用療法でも、シスプラチン+ビノレルビンの併用化学療法でも、いずれも外来で行う場合に費用負担は軽減する。
 
 小山氏は「治療に対する適応基準に従って患者選択が適切に行われれば、シスプラチンレジメンの外来化学療法は安全に施行できると考えられる」と話した。