ALK-Lung Cancer Study GroupALCAS)による全国的な診断ネットワークの中間報告から、multiplex RT-PCR法により日本人の非小細胞肺癌NSCLC)の約5%がanaplastic lymphoma kinaseALK)融合型癌遺伝子陽性であり、同融合遺伝子は感度良好に同定が可能で、肺癌の分子診断法および分子標的治療の良好なターゲットとなりうることが示された。4月23日から25日まで京都市で開催された第50回日本呼吸器学会学術講演会で、自治医科大学ゲノム機能研究部・呼吸器内科の曽田学氏が発表した。

 曽田氏らは2007年に、微小管会合タンパクechinoderm microtubule associated protein-like 4(EML4)と受容体型チロシンキナーゼanaplastic lymphoma kinase(ALK)が融合した新しい癌化キナーゼ、EML4-ALKが非小細胞肺癌(NSCLC)の約5%に発現していることを発見した。

 EML4-ALKを肺胞上皮に特異的に発現するトランスジェニックマウスでは、生後2週間で数百個の肺癌を同時に発症する。しかし、ALK阻害剤の投与により、これらの腫瘍は速やかに消失する。

 現在、同遺伝子陽性の肺癌患者を対象としたALK阻害剤治療の臨床試験が海外で開始されており、治療適応を決定する上で同遺伝子の正確な測定は必須になる。

 同大の間野博行教授らは、ALK-Lung Cancer Study Group(ALCAS)による日本人陽性肺癌症例の全国診断ネットワークを設立した。今回はALK融合型癌遺伝子の正確かつ鋭敏な検出法の確立を目的として、全国の共同研究機関から肺癌臨床検体を収集して同遺伝子の存在が解析され、曽田氏がその中間報告を行った。

 同ネットワークでは、EML4-ALK cDNAの全バリアントを検出することができるmultiplex RT-PCR法を開発するとともに、EML4-ALKタンパクを感度良く検出する免疫組織染色法(iAEP法)も癌研究会癌研究所病理部の竹内賢吾氏らが中心となって開発し、両手法を組み合わせた大規模スクリーングを2009年から開始している。喀痰や胸水、気管支洗浄液、凍結生標本は自治医科大学のmultiplex RT-PCR法で、生検などのパラフィン標本は癌研有明病院のiAEP法でスクリーニングが実施される。

 曽田氏らは、EML4-ALKならびにkinesin family member 5B(KIF5B)-ALKの全てのin-frame融合cDNAの検出が可能なPCRプライマーセットを設計した。ALCAS参加施設から送られた喀痰などの試料から合成したcDNAを基質として、multiplex RT-PCR法でALK融合型遺伝子の有無を検討した。

 2009年8月までに総症例数220人(平均年齢65歳、うち男性137人)、262サンプルの解析が行われた。サンプルの内訳は、気管支洗浄液やブラシ洗浄液などの気管支鏡を用いたものが最も多く、ほぼ半数を占め、胸水、末梢血がこれに続いた。組織別では腺癌が最も多く153サンプルだった。

 このうち、EML4-ALK陽性は11人(平均年齢48.2歳、男性4人)で、これまでの報告と同様、総症例数の5%に相当する割合であった。陽性例は陰性例(平均年齢66歳)と比較して若年であった(p=0.004257)。11人全員が腺癌だった。

 曽田氏は、「multiplex RT-PCR法を用いて、喀痰や胸水、気管支鏡で採取した検体や手術検体などからALK融合型癌遺伝子を感度良く同定することが可能」と言及した。