縦隔リンパ節転移N2)を有するIIIA期非小細胞肺癌NSCLC)に対し、術前化学療法術前放射線同時併用化学療法を比較するフェーズ3試験(WJTOG9903)が実施され、放射線を加えることで生存を延長する可能性が示された。4月23日から25日にかけて京都市で開催された第50回日本呼吸器学会学術講演会で、大阪市立大学医学部の木村達郎氏が発表した。

 縦隔リンパ節転移を有する切除可能なIIIA期のNSCLCに対し、手術単独群に比べて術前化学療法を併用した手術群の生存成績が良好であること、さらに化学療法より放射線同時併用化学療法が優れていることが報告されている。一方で放射線同時併用化学療法は、術後の急性呼吸促迫症候群(ARDS)や断端瘻などの合併症と治療関連死が増加する傾向があることも指摘されている。

 術前療法として化学療法と放射線同時併用化学療法を比較したフェーズ3試験はまだ報告されていないことから、木村氏らは、縦隔リンパ節転移を有する未治療の切除可能IIIA期に対し、化学療法+手術療法を行う群と、放射線同時併用化学療法+手術療法を行う群を比較する多施設のフェーズ3試験を計画した。

 主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は毒性、奏効率、無病生存率(DFS)、再発の種類とした。

 カルボプラチンはAUC=5、ドセタキセルは60mg/m2で投与し、2サイクル施行した。放射線は40Gy/20回を照射した。その後、両群ともに可能なら肺切除術を施行した。

 本試験は各群90人をサンプルサイズとしてデザインされたが、集積が遅れ、対象は2001年1月から2005年12月に登録された計60人となった。化学療法群に29人(年齢中央値57.6歳、男性19人)、放射線同時併用化学療法群に31人(同57.3歳、男性21人)を割り付けた。

 化学療法の完遂率は、1サイクル目は両群ともに100%、2サイクル目は化学療法群100%、放射線同時併用化学療法群93%だった。奏効率は両群とも25%となった。

 両群とも治療は耐容可能で治療関連死はなかった。グレード3の非血液毒性は、化学療法群では便秘および感染が各7.1%に発現し、放射線同時併用化学療法群では嘔気10.7%、便秘7.1%、嘔吐や下痢の3.6%などがこれに続いた。グレード3以上の血液毒性は、化学療法群では好中球減少が75.0%、白血球減少が46.4%に発現した。放射線同時併用化学療法群ではそれぞれ92.9%と89.3%と高く、血小板減少なども発現した。

 肺切除術は、化学療法群で85.7%、放射線同時併用化学療法群で89.3%に施行された。完全切除率や腫瘍残存率に大きな差はみられなかったが、ダウンステージは化学療法群の20.8%に対し、放射線同時併用化学療法群は40.0%だった。

 縦隔や肺門の再発など、放射線同時併用化学療法群で局所再発率が低い結果も示された。

 3年DFSは化学療法群17.9%、放射線同時併用化学療法群34.5%だったが、有意差はなかった(ハザード比=0.68、95%信頼区間;0.38-1.21、p=0.187)。3年全生存率はそれぞれ39.3%と51.7%で、こちらも有意差は得られなかった(ハザード比=0.77、95%信頼区間;0.42-1.41、p=0.397)。

 集積の遅れから、データ安全性監視委員会(DSMC)の勧告により同試験は中途終了となった。集積が遅れた理由について木村氏は、「このような試験は海外でも集積に時間がかかる。病理学的に証明された後の登録であったため、難しかったのではないか」と話した。

 本試験は症例数が少なく、統計学的な有意差を示すことができなかったが、術前化学療法に放射線を加えることで生存を延長する可能性は示されたといえる。