非小細胞肺癌に合併した癌性髄膜炎は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブエルロチニブで顕著に改善することが報告された。神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器内科の南條成輝氏らの研究グループと、虎ノ門病院呼吸器センター内科の高谷久史氏らの研究グループが、4月23日から25日まで京都市で開催された第50回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。

 癌性髄膜炎は髄膜癌腫症とも呼ばれ、癌細胞が髄膜に拡がることにより起こる。癌性髄膜炎を引き起こす原発巣としては肺癌が最も多い。南條氏らによれば、非小細胞肺癌では約1.4%に癌性髄膜炎が合併し、近年は化学療法の進展で生存期間が延長したのに伴い、発症率は増加しているという。癌性髄膜炎によって、患者のQOLは低下し、発症後の生存期間中央値は約3カ月と予後不良であると言われている。

 南條氏らの研究グループでは、2007年5月から2010年4月までに、非小細胞肺癌の治療中に癌性髄膜炎を発症した患者のうち、髄液細胞診で確定され、EGFR遺伝子変異を検索した13人(うち男性が4人)を対象に、癌性髄膜炎に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の効果を調べた。患者の年齢中央値は65歳で、組織型は全て腺癌だった。EGFR遺伝子変異陽性は12人で、エルロチニブによる治療は11人、ゲフィチニブによる治療は2人だった。診断から癌性髄膜炎発症までの期間は2.6〜75.5カ月であった。

 EGFR-TKI 治療の結果、13人中11人で全身状態(PS)が改善した。抗腫瘍効果は部分奏効(PR)が2人(15%)、病勢安定(SD)が9人(69%)で、画像による効果判定では9人中8人(89%)で効果が認められた。観察期間中央値7.1カ月において、癌性髄膜炎発症からの生存期間(OS)中央値は7.9カ月、無増悪生存期間(PFS)中央値は5.3カ月、1年生存率は25.6%であり、「良好な予後を示した」とした。なお、重度の有害事象は見られなかった。

 またゲフィチニブ治療中に癌性髄膜炎を発症した5人では、発症後エルロチニブに変更した結果、4人で症状の改善が認められ、OS中央値は12.6カ月、PFS中央値は10.0カ月と良好であった。

 高谷氏らのグループは、2008年1月から2010年4月までに、非小細胞肺癌の治療中に癌性髄膜炎を発症した6人を対象とした。EGFR-TKI使用歴は1人(ゲフィチニブ)のみ。癌性髄膜炎に対しては全員にエルロチニブを投与した。

 EGFR-TKI治療後、4人でPSの改善が認められ、このうちPS 4から1への改善が2人、PS 3から1が1人、PS 4から2が1人で、抗腫瘍効果はPRが3人、SDが1人だった。EGFR-TKI治療後の生存期間中央値は387日で、1年生存率は50%で、「症例数は少ないが生存期間が2年以上に及ぶ患者さんもいた」(高谷氏)という。

 このため高谷氏らは、「EGFR変異陽性の癌性髄膜炎では、PS 3〜4と不良であっても、EGFR-TKIの高い効果が期待できる」と結論づけている。また高谷氏によれば、脳に腫瘍浸潤がある場合、脳血液関門(BBB)が破綻し、EGFR-TKIの髄液移行が良くなること、またエルロチニブの方が髄液中の濃度が高いことが報告されているという。