間質性肺炎を合併した肺癌症例では、抗癌剤治療により急性増悪を起こす可能性がある。そのため、これまでの肺癌臨床試験では対象から除外され、抗癌剤治療の有用性について前向きに証明したデータはなかった。しかし日常臨床では、間質性肺炎の状態や患者の希望により、リスクを十分に説明し、同意を得たうえで抗癌剤治療を行う場合もある。6月12〜14日に東京都で開催された第49回日本呼吸器学会学術講演会の日本肺癌学会との共同企画「間質性肺炎患者の癌治療―ガイドラインにむけて―」で、飯塚病院の海老規之氏は、非小細胞肺癌を合併した特発性肺線維症(IPF)に対する前向き観察研究(LOGIK0603)を開始したと報告した。

 日常診療において、肺癌症例の約5%は間質性肺炎を合併している。間質性肺炎は様々な要因で発症し、いったん急性増悪を発症すると死亡率は約80%となり、改善例でも平均6カ月で死亡するとされている。

 海老氏らが進めているLOGIK0603の目的は、非小細胞肺癌を合併したIPFの経過として急性増悪の頻度を前向きに観察することである。抗癌剤としてパクリタキセル(PAC)とカルボプラチン(CBDCA)の併用療法を行った症例については、抗癌剤投与による急性増悪の頻度とその死亡率も観察し、その他の安全性、評価可能病変を有する症例については有効性も観察する。

 対象とする間質性肺炎は、他の原因疾患がなく、組織学的にIPFの診断が行われているか、HRCTで明らかな通常型間質性肺炎(UIP)パターンを呈し、臨床的にIPF/UIPと診断される症例とし、これに非小細胞肺癌(3B期または4期)を合併した症例とする。IPFの臨床経過で明らかなLDH、KL-6、SP-Aなどの上昇を認め、増悪が疑われる症例は除外する。

 適格基準として、肺機能検査では、PaO2(ルームエアー)60torr以上、%VCは60%を超えていること、%DLCOは40%を超えていること、6分間歩行時SpO2は88%を超えていることも含まれる。

 患者は、希望によりA群「対症療法」またはB群「抗癌剤治療CBDCA+PAC」のいずれかの群に登録する。

 レジメンは、ECOG1594などで標準治療とみなされ、間質性肺炎や肺線維症に対して投与禁忌ではなく、外来化学療法への移行が可能で日常診療としての汎用性が高いCBDCA+PACとした。CBDCA+PAC は医師の使用頻度も高い。CBCDAはAUC5〜6分.mg/mLをday1、PACは175〜200mg/m2をday1に投与し、21日を1コースとして繰り返す。進行した場合はその時点で試験中止とする。

 CBDCA+PACの中止基準は、(1)次コースが投与開始日より21日後までに投与を開始できなかった場合、(2)2回目の減量が必要となった場合、(3)グレード4の非血液毒性が発現した場合、(4)間質性肺炎の急性増悪を発症した場合―などとする。IPFの急性増悪時の診断と治療は、呼吸器学会の「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き」に従う。

 IPFの急性増悪の定義は、呼吸困難の増強、HRCT所見で蜂窩肺所見+新たに生じたすりガラス影・浸潤影、動脈血酸素分圧の低下(同一条件下でPaO210mmHg以上)、のすべてがみられる場合とする。

 予定登録数は各群30例、登録期間は3年、追跡期間は登録終了後1年とした。

 抗癌剤による間質性肺炎発症率は2.5〜5.0%、自然経過での間質性肺炎急性増悪の発症率は5〜10%、抗癌剤による間質性肺炎急性増悪の発症率は15〜30%とみられている。そのため海老氏らは、15例で中間解析を行い、うち6例以上で急性増悪を発症した場合は試験を中止することとしている。

 現在、九州を中心に関西の施設なども含めて28施設が参加を表明し、現在、治験審査委員会(IRB)の承認を得た施設は21施設になっているという。