初回治療としてEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を投与したEGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺癌(NSCLC)において、画像上で病勢進行(RECIST PD)と判定された後もEGFR-TKIを継続投与する患者は一定数存在し、RECIST PDから臨床的PDまでの期間中央値は96日だった。また、EGFR-TKI投与中止後の病勢悪化(フレアー現象)率は2.4%だった。多施設観察研究の中間報告によるもので、11月21日から22日まで東京で開催された第54回日本肺癌学会総会で、京都大学呼吸器内科の金永学氏らが発表した。

 EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者では、EGFR-TKIに対し感受性を示すが、やがて薬剤耐性を獲得し、前向き臨床試験においては無増悪生存期間(PFS)の成績は9〜14カ月であることが示されている。一方で、後ろ向きの検討から、画像上でPDと判定された後もEGFR-TKIを継続投与することが有効とする報告もあるが、実態は不明である。

 そこで金氏らは、実地診療において、初回治療でEGFR-TKIを投与されたEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者の治療実態を明らかにするため、前向き多施設共同観察研究を実施した。

 対象は、2009年1月から2011年12月31日までにEGFR-TKIによる初回治療を開始したEGFR遺伝子変異陽性(exon20挿入変異とT790M変異は除外)の進行・再発NSCLC。RECISTによるPD後のEGFR-TKIの継続投与の状況とその経過を解析した。その他、EGFR-TKIと化学療法併用の実態、EGFR-TKI治療期間と中止理由、EGFR-TKI中止に伴うフレアー現象、EGFR-TKIの再投与、全生存期間(OS)などについても検討した。

 主要評価項目はRECISTによるPD後にEGFR-TKIを継続投与された患者における臨床的PDとなるまでの期間。臨床的PDは(1)病勢進行を伴う症状の出現、(2)病勢進行に伴うPSの低下、(3)主要臓器を脅かす病態、(4)複数臓器での明らかな病勢進行――のいずれかと定義した。また、フレアー現象の定義は、EGFR-TKI投与中止後1カ月以内の死亡または病勢悪化による入院や次の治療を実施できなかった場合とし、後治療開始後の増悪、感染症や血栓性静脈炎などによる悪化は除外した。

 目標症例数は国内34施設から500-800例としており、これまでに450例を登録ずみ。今回は症例報告書を回収した284例の解析結果を発表した。

 登録した全患者(450例)において、ゲフィチニブ投与例が92.7%、エルロチニブ投与例が7.3%、女性が69.1%、20-49歳が34.9%、50-69歳が57.1%、ECOG PS 0が33.3%、ECOG PS 1が42.2%、喫煙歴なしが66.2%、exon 19欠失が49.6%、exon21 L858R変異が46.7%だった。

 症例報告書を回収した284例中、RECISTによるPD後もEGFR-TKIの投与を継続したいわゆる「beyond PD」患者は41例だった。beyond PD患者におけるRECIST PDから臨床的PDまでの期間中央値は96日だった。

 284例中、EGFR-TKI投与を中止したのは246例で、うちbeyond PD患者は32例だった。この32例のRECIST PDから臨床的PDまでの期間には幅があり、7〜403日だった。

 一方、現在もEGFR-TKIを投与しているのは284例中38例。うちRECIST PDとなっていないのは28例で、RECIST-PDかつ臨床的PDとなったのは1例、RECIST-PDとなったが臨床的PDにはなっていない患者は9例だった。現解析時点で、この9例のRECIST-PDから臨床的PDまでの期間は49-573日となっている。

 治療中止理由では、臨床的PDの有無にかかわらずRECISTによるPDが115例と最も多く、次いで臨床的PDが77例、有害事象または患者希望が38例だった。

 284例におけるEGFR-TKIによる治療効果は、完全奏効が1.8%、部分奏効が64.1%、病勢安定が20.8%、PDが3.2%。

 無増悪生存期間(RECISTによるPDとなるまでの期間)中央値は297日で、EGFR-TKI投与中止後のフレアー状態は6例(2.4%)に認められた。

 解析時点での生存例は97例、死亡例は161例で、うちNSCLCによる死亡例は148例だった。全体のOS中央値は800日だった。

 EGFR-TKIの治療中止理由別に検討した結果、RECIST PDによる投与中止例(110例)のOS中央値は794日、臨床的PDによる投与中止例(85例、RECIST-PD後EGFR-TKI治療中の患者を含む)は636日だった。これについて金氏は、「臨床的PDで投与中止となった患者の中には、画像上PDになってから臨床的PDとなった患者と、最初から臨床的PDが確認された状態の悪い患者が存在した」と補足した。

 EGFR-TKI後の全身療法が行われた患者は157例で、うち44例がシスプラチンベースの併用療法、38例がカルボプラチンベースの併用療法、細胞障害性抗癌剤単剤が27例、その他のEGFR-TKIによる治療が45例だった。

 金氏は、今回の発表は予定症例の3分の2程度のデータを解析したものであることを補足し、「EGFR-TKI投与中止後のフレアーが認められた割合は過去の報告よりも低い値だった。またRECISTによるPD後も90日以上EGFR-TKIの投与が可能だった患者がいたが、どのような患者においてbeyond PDの治療効果が得られるのかについてはさらなる検討が必要」と語った。