肺癌終末期の呼吸困難への対応について、レトロスペクティブな検討から、死亡患者における呼吸困難の頻度は約70%と高く、ガイドラインで推奨されている塩酸モルヒネ(以下、モルヒネ)、ステロイドの全身投与は約60%と比較的高率に行われているものの、全例で徹底されているとは言い難い状況が示された。11月21日から22日まで東京都で開催された第54回日本肺癌学会総会で、日本大学医学部内科学講座呼吸器内科分野の佐藤良博氏が発表した。

 肺癌の終末期には呼吸困難が問題となることが多い。呼吸困難の治療は原因病態に対する治療が第一であるが、複数の原因が絡み合い、難治性で不可逆的なことも多い。

 モルヒネは呼吸困難の感覚を改善すると言われ、薬物療法の第一選択とされる。日本緩和医療学会の緩和医療ガイドライン作成委員会による「がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン(2011年版)」では、呼吸困難を訴える患者に対して、モルヒネの全身投与はプラセボと比較して呼吸困難を緩和する根拠があるとして、2B(弱い推奨)で推奨されている。しかし、その投与時期や用量、投与方法などに一定の見解が得られていないのが実情である。

 佐藤氏らは、同院に入院中に最期を迎えた肺癌患者の診療記録をもとに、終末期医療における呼吸困難の原因病態の把握とモルヒネの使用状況について調査を行った。

 対象は、2011年から2013年までに同院に入院し、最期を迎えた原発性肺癌患者136例(男性104例、女性32例)の診療録をもとに、呼吸困難の有無、程度および原因病態、モルヒネの使用状況などを検討した。

 136例中、肺癌は130例、肺癌以外(悪性胸膜中皮腫など)は6例だった。肺癌では腺癌が55例で最も多く、小細胞癌の23例、扁平上皮癌の20例が次いだ。病期ではIV期が121例で最も多かったが、IIIb期の10例、IIIa期の3例なども含まれた。

 呼吸困難有りは94例(69%)、無しは42例で、胸水有りは79例、無しは57例だった。呼吸困難有り・胸水有りは61例、呼吸困難有り・胸水無しは33例だった。

 136例中、モルヒネが使用されたのは72例だった。呼吸困難に対しモルヒネが使用されたのは94例中60例(64%)で、呼吸困難有り・胸水有りの39例、呼吸困難有り・胸水無しの21例に使用されていた。

 モルヒネの使用日数の中央値は3日(範囲:1-73)、最頻値は2日、平均7.18日で、投与する時期はできるだけ晩期にしようとする傾向がみられた。モルヒネの使用量の中央値は20mg/日(範囲:10-2100)、最頻値は10mg/日、平均値68.33mg/日だった。

 ステロイドは前述のガイドラインにおいて、呼吸困難に対して2C(弱い推奨)で推奨されている。ステロイドは136例中70例に使用され、このうち呼吸困難の軽減を目的とした使用は42例(60%)だった。

 呼吸困難に対しモルヒネを使用しなかった34例中、ステロイドの投与は15例、人工呼吸管理は4例、気道ステント挿入は2例で行われていた。これらのいずれも行われなかった症例は13例で、このうち3例は入院直後に急変し死亡したためモルヒネを使用せず、3例は疼痛に対しモルヒネ以外のオピオイドを使用し、呼吸苦の軽減が得られたためモルヒネを使用しなかった。一方、呼吸困難に対するモルヒネの使用に関し、主治医からの十分な説明や家族への意思確認が行われないまま最期を迎えた症例が7例確認された。

 佐藤氏は「癌性疼痛だけでなく、呼吸困難に対しても塩酸モルヒネの使用が有効であることに関して、患者、家族だけでなく、医療従事者間にもより広く周知されることが望ましいと考えられた」と話した。