非小細胞肺癌(NSCLC)において、EGFR遺伝子変異型例は野生型例に比べて脳転移の頻度は高いが、病変は小さく、多発傾向があり、髄液播種を来しやすいことが、レトロスペクティブな解析で明らかになった。また脳転移例に対し、放射線治療を併用しなくても、EGFR-TKI単独療法で高い有効性が得られることがフェーズ2試験で明らかになった。11月21日から東京で開催された第54回日本肺癌学会総会で、千葉県がんセンター脳神経外科の井内俊彦氏らが発表した。

 このレトロスペクティブな解析は、NSCLC患者1127人を対象に行われた。腺癌が79%を占めた。EGFR遺伝子変異型は29%で、このうちexon19欠失変異が46%、L858R変異が51%だった。

 脳転移の頻度は23%で、内訳は脳転移で発症した患者が5%、全身の評価で判明した患者が9%、経過中に脳転移と診断された患者が9%だった。

 EGFR遺伝子変異の有無で分けると、変異型例での脳転移頻度は31%だが、野生型例では26%であった(オッズ比1.86、p<0.001)。またexon19欠失変異例では脳転移の頻度は38%、L858R変異例では26%だった。

 しかし脳転移の大きさは、変異型例では中央値8mmだが、野生型例では12mmであり(p=0.003)、30mm以下の症例が変異型では89%、野生型では81%を占めた。また脳転移の個数が5個以上の症例が変異型では35%、野生型では26%だった(p=0.231)。髄液播種の症例は変異型では31%、野生型では13%だった(オッズ比3.04、p=0.0004)

 脳転移診断後の生存期間の中央値は変異型例では1.8年、野生型例は0.7年だった(ハザード比2.23、p<0.001)。

 また脳転移からみた場合、脳転移症例の40%がEGFR遺伝子変異型であり、腺癌に限ると44%を占めた。

 続いて、脳転移例に対するTKI単独療法の治療成績が報告された。対象は、肺腺癌で転移性脳腫瘍を有し、EGFR遺伝子変異型で、治療を必要とする頭蓋外病変のある患者。ゲフィチニブ250mg/日を投与し、頭蓋内・外病変の進行時にはエルロチニブ150mg/日を投与、さらにPDとなった時は放射線療法を行うというプロトコールで治療が行われた。

 41人が登録した。男性12人、女性29人、60歳以上が31人で、喫煙歴のない患者が32人、PS 0が15人、PS 1が19人、PS 2が7人だった。脳転移個数が1個の患者が12人、2個が5人、3個が6人、4個が18人。脳転移サイズが15mm以上の患者は9人だった。

 ゲフィチニブによる抗腫瘍効果は、CRが32%、PRが56%、SDが10%で、奏効率は88%、病勢制御率は98%となった。

 ゲフィチニブで頭蓋内病変を制御できた期間中央値は14.5カ月だった。ゲフィチニブ投与中止理由は、頭蓋内病変進行15人、頭蓋外病変進行12人、頭蓋外病変消失1人、患者PS低下1人、副作用による中止が3人だった。エルロチニブは13人に投与された。

 脳転移診断後の生存期間中央値は21.9カ月で、頭蓋外病変死が13人、中枢神経死が4人であった。

 また放射線治療は41人中20人(全脳照射34%、定位照射15%)に行われた。脳転移診断から放射線治療までの期間中央値は17.9カ月であり、「放射線治療を1年半、回避可能であった」とした。また死亡例17人のうち、29%の患者では放射線治療を受けていなかった。

 Exon19欠失変異例では、頭蓋内病変制御の期間中央値は17.5カ月、L858R変異例では10.2カ月だった(p=0.003)。また脳転移診断から放射線治療までの期間中央値はそれぞれ18.4カ月、13.1カ月であった(p=0.196)。

 グレード4の有害事象はなかった。グレード3の有害事象は皮膚障害が6人、肝障害が5人、造血器障害が2人、肺臓炎が1人だった。

 これらの結果から、「EGFR変異肺腺癌の脳転移例に対し、TKI単独療法は、放射線治療を併用しなくても奏効率は高く、特にexon19欠失変異例で有効性が高い」とした。