がん治療とCINV研究会による癌薬物療法による悪心・嘔吐(CINV)の実態調査の結果から、遅発期悪心の発生頻度が高く、対処の必要性が高いことが示された。11月21日から22日まで東京で開催された第54回日本肺癌学会総会で、福岡大学病院呼吸器内科の藤田昌樹氏らが発表した。

 CINVは、患者のQOLを大きく損なう原因となることから、CINVの実態を把握し、適切な抑制手段を探る必要がある。そこで、2011年に「がん治療とCINV研究会」が結成され、高度および中等度催吐性化学療法に起因する急性および遅発性のCINVの発現状況、制吐療法の実際について、癌腫ごと(肺癌、乳癌、消化器癌、婦人科癌、血液癌)に調査が実施された。

 調査に登録した患者は2068例。患者のCINV日記と医療スタッフが記入した質問表の両者が揃った症例が1935例。このうち高度催吐性化学療法(HEC)および中等度催吐性化学療法(MEC)を施行した合計1925例を解析対象とした。

 全体の年齢中央値は65歳、男性が318例、女性が111例。MEC施行者は710例、HEC施行者は1215例。癌腫ごとの症例内訳は、肺癌が429例、乳癌が433例、消化器癌が651例、婦人科癌が215例、血液癌が197例。

 全ての癌腫を対象に解析したところ、HEC施行者(1215例)のうち、CDDPベースの治療を受けていたグループでは、制吐薬3剤併用例は81%、制吐薬2剤併用例は19%だった。非CDDPベースの治療を受けていたグループでは制吐薬3剤併用例は64%、2剤併用例は36%だった。MEC施行者(710例)では3剤併用例は28%、2剤併用例が72%だった。

 HEC施行者について、癌腫別に見てみると、肺癌ではCDDPベースのレジメンを受けていた患者はほとんどが制吐薬3剤併用だったが、血液癌では非CDDPベースのレジメンを受けていた患者において制吐薬2剤併用例が多かった。消化器癌でCDDPベースのレジメンを受けていた患者では3剤併用は316例、2剤併用は111例だった。乳癌では非CDDPベースのレジメンを受けていた患者において、3剤併用が310例、2剤併用が49例だった。

 次に、肺癌患者を対象に解析した結果を提示した。患者背景は男性割合が74.1%、非小細胞肺癌が76.5%、化学療法でシスプラチンベースだった患者は43.6%、カルボプラチンベースは52.9%だった。5HT3受容体拮抗薬はパロノセトロンが52.2%、グラニセトロンが40.8%。

 MEC施行者とHEC施行者のCINVのコントロール状況を見ると、急性期悪心の発生割合はそれぞれ4.6%、6.8%、急性嘔吐はそれぞれ1.7%、0.5%、遅発期嘔吐はそれぞれ10.9%、7.9%だった。

 一方、遅発期悪心の発現では、MEC施行者が35.2%だったのに対し、HEC施行者が46.3%だった。

 遅発期悪心の予測因子を多変量解析で検討したところ、男性では低年齢、飲酒歴なし、女性では低年齢が抽出された。急性期悪心については、女性においてつわりの経験が有意な予測因子だった。

 急性期嘔吐については有意な予測因子が見いだされなかったが、遅発期嘔吐については男女共に制吐薬2剤使用が重要な因子だった。女性では、さらに低アルブミンも予測因子だった。乗り物酔い、化学療法のレジメン、妊娠歴の有無、パロノセトロンの使用は、CINVのリスク因子として抽出されなかった。

 これらの結果から藤田氏は、「本研究により日本の癌薬物療法による悪心・嘔吐の実態が明らかになった。特に遅発期嘔吐の適切な対処が重要である」と締めくくった。