EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)獲得耐性の非小細胞肺癌患者において、再生検を実施できた患者は47%にとどまることが報告された。増悪・再発部位が脳転移や骨転移だった患者は再生検の実施が困難だったことから、再生検の実施にあたっては増悪部位に応じて慎重な判断が求められると考えられた。11月21日から22日まで東京で開催された第54回日本肺癌学会総会で、岐阜市民病院呼吸器・腫瘍内科の長谷川貴昭氏らが発表した。

 EGFR-TKI耐性獲得時の治療方針を決定する際、再生検を行うことは個々の症例で耐性機序を検討するために有用であると考えられるようになってきている。

 そこで長谷川氏らは、EGFR-TKI獲得耐性時の増悪・再発部位を調査し、EGFR-TKI獲得耐性時の再生検の実施可能性について検討した。

 対象は、同院でEGFR-TKIを投与され、無増悪生存期間(PFS)が得られた非小細胞肺癌患者45例。増悪・再発部位のほか、後治療の内容を調査。後治療の内容別にOSを解析したほか、特に生検が困難とされるoligoprogression(増悪パターンが脳や頭蓋外の特定の部位に限られている状態)の症例についても解析した。
 
 患者背景は、年齢中央値は66歳(範囲37-86)、女性が71.1%、ステージIVが68.8%、再発症例が24.4%、腺癌が97.7%。EGFR-TKIをファーストラインで使用した患者が60.0%、セカンドラインが31.1%、使用薬剤はゲフィチニブが77.7%、エルロチニブが22.2%、EGFR-TKIで部分奏効(PR)だった患者は48.8%、病勢安定(SD)は51.1%。

 EGFR-TKIでSD以上が得られた患者のPFS中央値は12.0カ月、全生存期間(OS)中央値は48.0カ月だった。

 EGFR-TKIによる治療でPDとなった患者(40例)の増悪パターンを解析すると、中枢神経のみ転移がある患者は10例で、うち全例が多発脳転移例だった。原発巣を含むその他の部位が原因で増悪した患者は30例で、その内訳は単発病変が19例(原発巣9例、骨6例、リンパ節2例、副腎1例、肝1例)、多発病変が11例(肺内8例、癌性胸膜炎2例、原発巣および脳1例)だった。

 画像評価をもとに、全身麻酔が必要、もしくは気管支鏡や局所麻酔下での生検が困難と判断された患者は、多発脳転移例だった10例、骨転移6例のうち5例、リンパ節転移2例のうち1例、副腎転移1例、肺内転移8例中4例で、PDとなった患者の53%を占めた。

 EGFR-TKI獲得耐性となったPD患者40例について、後治療別にOSを解析したところ、後治療でEGFR-TKI投与を継続した患者(±局所治療)は11例で、その他の治療を行った患者(29例)よりもOSが良好な傾向が認められた。
 
 またoligo progression症例(生検が困難な症例、10例)のみを対象にOSを解析したところ、EGFR-TKI投与を継続した患者(±局所治療、6例)のOS中央値は28.0カ月、その他の治療を行った患者(4例)は14.0カ月だった。

 長谷川氏は、脳転移巣では耐性が発現しづらく中枢神経系におけるT790Mの変異は10%程度であったこと、EGFR-TKI獲得耐性のoligo progression症例に対し分子標的治療薬による全身治療を継続した上で局所治療を実施することで再増悪までの生存期間を延長したこと、特にPS不良例へのEGFR-TKIの継続投与はQOL維持や新規薬剤による有害事象の懸念の観点から有用とする報告があることなどを紹介。その上で、「EGFR-TKI獲得耐性時の増悪・再発部位は脳転移や骨転移などで再生検実施が困難な症例が少なからず存在し、増悪部位に応じて慎重な判断が求められる。また、再生検が困難な患者を含め、EGFR-TKIを継続投与することは有効である可能性が示唆された」と語った。