非小細胞肺癌(NSCLC)に対するEGFR-TKI投与時の重篤な副作用として知られる薬剤性間質性肺疾患(ILD)の発症のリスク因子として、既存肺における「ILD(有)」および「正常肺占有率(50%以下)」、死亡に至った予後不良な薬剤性ILD発症リスク因子として、既存肺における「正常肺占有率(50%以下)」が特定された。これは、エルロチニブの製造販売後臨床試験(JO21661)に登録された症例を対象とした前向きコホート研究から示されたもの。11月21日から22日まで東京都で開催されている第54回日本肺癌学会総会で、公立学校共済組合近畿中央病院放射線診断科の上甲剛氏が発表した。

 EGFR-TKIの重篤な副作用として知られるILDについて、危険因子はまだ十分明らかにされていない。

 そのため上甲氏らは、ILD発症の予測可能なバイオマーカーの同定を目的に、JO21661試験に登録された症例を対象として、エルロチニブ投与前の胸部CT所見とエルロチニブ投与後のILD発症および死亡に至った予後不良なILD発症との関連を検討した。

 投与前の胸部CT所見の評価は、4名の画像診断医からなる独立画像判定委員会が実施した。評価者には、被験者背景やエルロチニブ投与後のILD発症の有無など、画像以外の情報をマスクし、全例に対して同一の評価基準を適応した。エルロチニブ投与後120日間観察し、発現したILD(主治医判定)について、本研究の画像判定委員と呼吸内科医を含めたILD安全性検討委員会が最終判定を行った。既存肺の評価は、間質性肺炎、肺気腫、癌性リンパ管症、放射線性肺炎、治癒型結核、残存正常肺、可動制限域についてそれぞれ評価基準を設けて行った。

 645例がコホートに登録され、不適格とされた18例を除外し、薬剤性ILD発症例19例(うち死亡6例)と非発症例608例の計627例が評価対象となった。

 既存肺の評価の集計から、間質性肺炎は、薬剤性ILD発症例のうち死亡した6例全例で認めなかったことが示された。上甲氏は「この点が結果に多少影響したと考えられる」とした。全627例のうち薬剤性ILDにより死亡した6例を除く621例では、間質性肺炎は574例(92.4%)で認めなかった。

 多変量ロジスティック回帰分析の結果、薬剤性ILD発症のリスク因子として、既存肺における「間質性肺炎(有)」(「無」に対し、オッズ比4.039[95%信頼区間:1.344-12.140])と「正常肺占有率(50%以下)」(「50%超」に対し、オッズ比4.801[95%信頼区間:1.786-12.907])が抽出された。また、予後不良な薬剤性ILD発症のリスク因子としては、「正常肺占有率(50%以下)」(「50%超」に対し、オッズ比8.810[95%信頼区間:1.741-44.577])が抽出された。

 ゲフィチニブのコホート内ケースコントロールスタディでは、薬剤性ILD発症のリスク因子は同様だったが、薬剤性ILD発症例における予後不良因子として「既存肺のILD」「可動制限域が広いこと」「正常肺占有率の低さ」などが示された。ゲフィチニブと今回のエルロチニブの結果の違いについて、上甲氏は考えられる要因に、試験方法・解析方法が異なること(対象がゲフィチニブでは化学療法を含むILD発症例、エルロチニブは投与全例)、本研究の予後不良例は6例(既存のILDは0例)と非常に少数であったことを挙げた。

 上甲氏は、EGFR-TKIによる薬剤性ILD発症/死亡のリスク因子の意義付けについて、「慢性間質性肺炎があると急性増悪をきたす素地があることになり、起こると重篤になる。正常肺が少ないことは再生が進んでいることを示し、正常部に病原体が集中すると考えられる。障害は乏しい正常部にのみ生じ、ガス交換が不能になるため、正常肺が少ないと重篤になる」と話した。