進行・再発非小細胞肺癌(NSCLC)に対する、c-MET阻害薬tivantinibエルロチニブ併用の至適用量を検討する日本人を対象としたフェーズ1用量漸増試験の結果、高代謝型では360mg1日2回投与、低代謝型では240mg1日2回投与であることが示された。なお、NSCLCに対するtivantinibとエルロチニブ併用投与のアジアにおけるフェーズ3試験は中止したと発表されているが、現在、EGFR阻害薬抵抗性患者を対象としたフェーズ2試験が進められている。11月8日から岡山市で開催された第53回日本肺癌学会総会で、大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターの田宮基裕氏が発表した。

 肝細胞増殖因子(HGF)受容体であるc-METは、癌の細胞増殖や浸潤、転移、生存、そしてEGFR阻害剤への耐性に関与し、c-METを高発現する症例は予後不良とされる。

 c-MET阻害薬であるtivantinibは、これまでの基礎的検討で抗腫瘍効果が確認されているが、一方で、CYP2C19により代謝されるため、CYP2C19遺伝子型によって、高代謝型(EM型)と低代謝型(PM)に分けられる。欧米人ではほとんどがEM型だが、日本人ではEM型は82.4%、PM型は17.6%と考えられている。

 これまでのフェーズ1単独投与試験から、tivantinibの推奨投与量はEM型で360mg1日2回、PM型では240mg1日2回投与と示されているが、併用投与における検討はない。

 そこで、田宮氏らのグループは、進行・再発NSCLCを対象に、tivantinibとエルロチニブの併用投与における投与量の至適化と安全性および忍容性を評価するため、フェーズ1用量漸増試験を行った。この試験は、EM型患者を対象とした003試験とPM型患者を対象とした005試験から成る。

 両試験ともに、20歳以上の全身状態の良好(PS0-1)な進行・再発NSCLCを対象とし、登録条件としてEGFR遺伝子変異の有無は規定しなかった。

 エルロチニブ(1日1回150mg、食間投与)との併用で、003試験では、tivantinib 300mg1日2回食間投与、360mg1日2回食間投与、360mg1日2回食後投与の3コホートを設定した。005試験では、120mg1日2回食間投与、240mg1日2回食間投与の2コホートを設定し、検証を行った。

 用量制限毒性(DLT)の定義は、初回投与から29日以内に認められたグレード4のヘモグロビン減少、グレード4の血小板減少またはグレード3の出血を伴う血小板減少、8日以上継続するグレード4白血球減少または好中球減少、グレード3以上の非血液毒性とした。グレード3の皮疹、管理可能なグレード3の嘔気、嘔吐、下痢、グレード3以上の特別な管理が不要な生化学検査値異常は除外した。

 003試験にはEM型症例(EM群)16例、005試験にはPM型症例(PM群)9例が登録された。患者の年齢中央値は、EM群61.5歳、PM群60歳。EGFR変異なし/あり/不明がそれぞれEM群8例/5例/3例、PM群5例/3例/1例だった。

 投与開始から29日以内の検討の結果、003試験、005試験ともにいずれの用量においても用量制限毒性は確認されなかった。

 試験期間全体における20%以上発現した主な有害事象は、EM群では、皮疹が最多で13例(81%)、下痢9例(56%)、皮膚乾燥8例(50%)、嘔気、口内炎、味覚障害が各5例(31%)、貧血、食欲不振、その他の皮膚障害、嘔吐が各4例(25%)。グレード3以上の有害事象は貧血、皮疹、嘔気、嘔吐が各1例だった。

 一方、PM群では、皮疹が9例(100%)、白血球減少、皮膚乾燥、疲労がそれぞれ3例(33%)、好中球減少、リンパ球減少、下痢、嘔気、食欲不振、その他の皮膚障害、爪の変形、洞性徐脈が各2例(22%)。グレード3以上の有害事象は、リンパ球減少と好中球減少が各2例と貧血が1例認められた。

 血中濃度を評価した薬物動態解析においても、PM群でわずかに代謝が遅い傾向であったが、両群に差はなかった。

 有効性については、EM群2例、PM群1例で部分奏効(PR)、EM群6例、PM群4例で病勢安定(SD)を認めた。奏効率(RR)はEM群12.5%、PM群11.1%、疾患コントロール率(DCR)はそれぞれ50.0%、55.5%だった。

 これらの結果から、「エルロチニブとの併用でtivantinibの推奨投与量は、単剤投与時と同じく、EM型症例では360mg1日2回、PM型症例では240mg1日2回と考えられた」と田宮氏は述べ、また、「DLTはいずれの群でも認められず、最大耐用量(MTD)にも到達せず、有効性も良好であると示唆された。安全性については、単剤で報告されている有害事象以外に、併用による新たな有害事象の発現はなかった」と締めくくった。

 なお、今年10月に、NSCLCに対するエルロチニブとtivantinib併用療法のアジアにおけるランダム化フェーズ3試験が間質性肺炎の副作用のため中止したと発表されていることについても田宮氏は言及し、「現在、EGFR阻害剤に抵抗性となった患者を対象としたフェーズ2試験が行われており、継続して検証されるだろう」とした。