肺腺癌において骨転移症例の骨関連事象(SRE)と予後を検討した結果、EGFR変異陽性例では変異陰性例に比べ、SREの頻度、初回SREまでの期間、および全生存期間(OS)が有意に良好であることが示された。11月8日から岡山で開催された第53回日本肺癌学会総会で、国立がん研究センター東病院の吉田達哉氏が発表した。

 一般に骨転移を有するNSCLC症例のうち30〜40%はSREを合併し、その場合の予後は不良とされるため、有骨転移症例におけるSREの予防は重要となる。しかし、肺腺癌においてEGFR遺伝子変異とSRE、予後の関係について検討した報告は少ない。

 2008年1月から2011年5月までに、同センターで初回化学療法を施行した(術後補助化学療法は含まない)骨転移を有する肺腺癌患者のうち、EGFR遺伝子検索を実施した151例をレトロスペクティブに調査した。対象には術後再発症例を含んだ。

 EGFR遺伝子変異のうち、EGFR阻害剤と関連があるL858R またはExon 19 Deletionの有無により陽性群と陰性群に分類し、患者背景、治療の詳細、SREの頻度と内訳、化学療法開始から初回SREまでの期間および予後を調査し、比較検討を行った。SREの定義は、骨病変に対する放射線治療・手術、高Ca血症、脊髄圧迫、病的骨折とした。

 EGFR遺伝子変異の解析結果は、陽性88例、陰性63例。2群間の患者背景で有意差を認めたのは、性別では女性(男性/女性それぞれ陽性群37例/51例、陰性群42例/21例、p=0.003)、および喫煙歴のない患者(禁煙/非喫煙が陽性群41例/47例、陰性群49例/14例、p<0.001)で、EGFR変異陽性群に有意に多かった。

 その他の患者背景では両群で有意差を認めなかった:年齢(EGFR陽性群の中央値64歳 36-86歳、陰性群の中央値65歳 22-77歳)、PS(PS0-1/2-3は陽性群72例/16例、陰性群58例/5例)、病期(IV期/術後再発が陽性群61例/27例、陰性群53例/10例)、骨転移の数(単発/多発転移が陽性群24例/64例、陰性群22例/41例)、化学療法前のSREの有無(陽性群18例/70例、陰性群11例/52例、そのうち放射線治療歴/脊椎圧迫が陽性群17例/1例、陰性群11例/0例)。

 患者の初回化学療法レジメンについては、陰性群では細胞傷害性抗癌剤を投与された症例(陽性群33例、陰性群62例 p<0.001)、陽性群ではEGFR-TKIによる治療を受けた症例(陽性群55例、陰性群1例)が有意に多かった。細胞傷害性抗癌剤については、プラチナ併用療法が陽性群31例(35%)に対し、陰性群は49例(78%)、単剤治療は陽性群2例(2%)に対し、陰性群は12例(18%)だった。陰性群の単剤治療で最も多かったのはドセタキセル(7例11%)だった。

 EGFR-TKIについては、陰性群1例(2%、エルロチニブ)だったのに対し、陽性群は55例(63%)で、そのうち48例(55%)がゲフィチニブだった。また、陽性群では、リチャレンジを含め、2次治療以降にEGFR-TKIを施行した例が多いことも示された(陽性群55例63%、陰性群9例14%、p<0.001)。

 初回治療時のゾレドロン酸使用歴の有無に有意差はみられなかった。

 初回SRE発生までの期間の中央値は、陽性群36カ月、陰性群16カ月で、ハザード比0.28(95%信頼区間 0.15-0.56、p<0.01)と陰性群で有意に早かった。SREの詳細については、観察期間中央値は陽性群16カ月、陰性群10カ月で、初回化学療法開始から1年時点でのSRE発症頻度は陽性群8例(9%)、陰性群18例(29%)と有意に陰性群で高かった(p<0.01)。

 初回SREの内訳では、放射線治療・手術(陽性群/陰性群でそれぞれ18例/16例)、高Ca血症(それぞれ0例/6例)、脊髄圧迫(それぞれ1例/1例)、病的骨折(両群0例)と、いずれも有意差はなかった。化学療法開始後の2回以上のSRE発症については、放射線治療・手術施行が陽性群4例(5%)、陰性群6例(10%)、高Ca血症が陽性群0例、陰性群2例(3%)だったが、2群間で有意差はなかった。

 初回SREのリスク因子を調べた結果、単変量解析では、喫煙歴(ハザード比2.48、95%信頼区間 1.30-5.06、p<0.01)、およびEGFR遺伝子変異の有無(ハザード比3.03、95%信頼区間 1.65-5.69、p<0.01)が有意な因子として見い出された。多変量解析では、EGFR遺伝子変異の有無(ハザード比2.51、95%信頼区間 1.32-4.85、p<0.01)のみが有意なリスク因子だった。年齢、性、PS、ステージ、骨転移数、化学療法前のSREの有無、初回治療時のゾレドロン酸の有無は有意な因子ではなかった。

 全生存期間(OS)中央値は、陽性群24カ月、陰性群11カ月で、EGFR変異陽性群で有意に良好であることが示された(p<0.01)。二次治療以降を含めると、陽性群でのEGFR-TKIの投与は88例中87例に施行されており、EGFR阻害剤が生存期間に影響したと考えられると吉田氏は指摘した。

 また、陽性群において、初回治療でEGFR-TKIを使用した場合と細胞障害性抗癌剤を使用した場合とで分けて検討したが、2グループ間で予後に有意差を認めなかった。

 EGFR変異陽性肺腺癌では、陰性肺腺癌と比較して、初回化学療法開始から1年時点でのSREの発症頻度が少なく、初回SREまでの期間は長く、予後も有意に良好であると吉田氏は締めくくった。