80歳以上の高齢非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対する胸腔鏡下手術の検討から、患者には多くの併存症が認められたものの、肺葉切除を82.7%の症例で行うことができ、術後の合併症および在院期間について良好な結果が得られたことが示された。「80歳以上の高齢者肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除、肺門リンパ節郭清は標準術式となりうる」―11月3日から大阪市で開催されている第52回日本肺癌学会総会で、虎の門病院呼吸器センター外科の原野隆之氏が発表した。

 高齢化に伴い、高齢者の肺癌症例が増加している。80歳時の平均余命からも、肺癌の根治は意義があると考えられるが、80歳以上の高齢者に対する手術は、合併症や手術侵襲の面から積極的適応とならないこともある。

 原野氏らは低侵襲の3ポート胸腔鏡手術による肺癌手術を行っており、今回、その治療成績と安全性を検討、報告した。

 対象は、2000年1月から2009年12月までに同科において治療目的で手術が施行された80歳以上のNSCLC患者81人(男性53人、平均年齢82.5歳)。原野氏らはこれらの患者について、術前背景因子、術後経過、予後を検討し、5年生存率、生存曲線をKaplan-Meier法で算出した。

 浸潤癌に対しては葉切除+肺門リンパ節郭清(ND1)を基本としたが、低肺機能患者、ハイリスクの患者、異時性多発肺癌には区域切除または部分切除を選択した。臨床診断でStage IIまでを手術対象とした。
 
 術前併存疾患(重複例を含む)では、循環器疾患54人(66.7%)、呼吸器疾患45人(55.6%)、代謝内分泌疾患33人(40.7%)などが認められた。
 
 循環器疾患の54人中、46人が高血圧を合併し、狭心症(7人)、心房細動(6人)、腹部大動脈瘤(5人)などの合併も認められた。呼吸器疾患の45人中、23人が閉塞性障害、5人が拘束性障害、2人が混合性障害を合併していた。COPDと喘息を除くと、間質性肺炎(12人)、結核の既往(10人)などの合併が認められた。
 
 2葉切除は1人(1.23%)、葉切除は67人(82.7%)、区域切除は4人(4.93%)、部分切除が9人(11.1%)に行われた。リンパ節郭清はND1が60人、ND2a-1が8人に行われた。
 
 ドレーン留置期間中央値は2日(範囲:1〜12日)で、術後在院日数の中央値は7日(範囲:3〜123日)だった。
 
 術後合併症は9人(11.1%)に発現し、内訳は、呼吸器関連の合併症が6人、不整脈が3人、呼吸器関連合併症(肺炎)の治療中のせん妄が1人だった。在院死は2人(2.4%)で、術後肺炎が1人、間質性肺炎の急性増悪が1人だった。
 
 病理学的病期はIA期35人(43.2%)、IB期33人(40.7%)、IIA期2人(2.47%)、IIB期4人(4.94%)、IIIA期4人(4.94%)、IIIB期3人(3.70%)だった。
 
 観察期間中央値は30カ月で、癌死は5人(6.17%)、他病死は21人(26.0%)だった。
 
 疾患特異的5年生存率は、IA期81.8%、IB期85.7%、II期以上64.3%、5年生存率は、IA期51.4%、IB期54.2%、II期以上53.0%となった。全病期では、5年生存率は52.1%、疾患特異的5年生存率は80.8%だった。これらの結果は従来の報告と比較して同等だった。
 
 原野氏は「術前リスクの高い症例でも、胸腔鏡手術により手術が可能となる。リスクが高い症例も手術適応となり、他病死が増加している可能性がある」と考察し、今回の検討で困難だった点として、術式選択による生存率の差の検討、肺癌死と比較して他病死が多かったことによる病期別の生存率の比較を挙げた。