上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)の薬剤のタイプは治療中の急性肺障害/間質性肺疾患(ALI/ILD)の出現率に影響を及ぼさず、肺癌治療を行う医師が投与対象を効率的に選択するようになってきた可能性が示唆された。11月12日から13日にかけて東京都で開催された第50回日本肺癌学会総会で、独立行政法人国立病院機構岡山医療センター呼吸器科の米井敏郎氏が岡山肺癌治療研究会を代表して発表した。

 EGFR-TKIのエルロチニブとゲフィチニブは非小細胞肺癌に対する有効性が認められている。しかし、ゲフィチニブではALI/ILDの発症が問題となり、発症率は欧米より日本で高いことが報告されている。またエルロチニブではALI/ILDの発症率やパターンはまだ十分明らかにされていない。

 そこで米井氏らは、非小細胞肺癌患者にエルロチニブを投与した場合のALI/ILDの発症率とパターンを分析し、ゲフィチニブを投与した場合と比較検討した。

 対象は非小細胞肺癌患者で、岡山肺癌治療研究会の関連施設で2008年1月から12月にエルロチニブ150mg/日が投与された209人(うち女性92人、年齢中央値66歳)と、2000年11月から2003年10月にゲフィチニブ250mg/日が投与された330人(うち女性110人、年齢中央値68歳)の計539人。

 米井氏らは治療開始から1カ月後までを観察期間と設定し、高分解能CT(HRCT)の画像所見から、既存の肺線維合併症の有無、ALI/ILDの有無、ALI/ILDを認める場合は発症パターンを判定した。

 女性、PS良好症例、2レジメン以上の化学療法の既往がある症例はエルロチニブ群に多く、既存の肺線維症はゲフィチニブ群に多く含まれていた。

 治療開始1カ月後の投与状況をみると、投与中止例はエルロチニブ群53人、ゲフィチニブ群85人で、中止理由が有害事象だったのはそれぞれ10人と16人だった。そのうちILDは、エルロチニブ群2人(1.0%)、ゲフィチニブ群8人(2.4%)に認められた。

 ILDを認めたエルロチニブ群の2人の画像パターンは非急性間質性肺炎(Non-AIP型)だったが、ゲフィチニブ群の8人中5人の画像パターンは急性間質性肺炎(AIP型)であり、うち4人の病理所見はびまん性肺胞障害(DAD)で、さらにそのうち3人が早期死亡していた。

 多変量解析では、PS不良や既存の肺線維症はALI/ILDの発症を有意に増加させる因子であったが、治療薬剤のタイプはILD発症に有意な影響を及ぼさないという結果だった。

 今回の検討では、エルロチニブにおけるALI/ILDの発症率は従来のゲフィチニブ治療における報告と比べてやや低かった。「発症率の差は薬剤そのものの違いよりも、むしろ危険因子がある患者はエルロチニブの治療対象としなかったという患者選択により生じている可能性がある」と米井氏は話した。