高齢者肺癌において「肺年齢」が実年齢よりも高い場合は手術リスクが高くなり、術式選択の判断材料となる。11月12日から13日に東京都で開催された第50回日本肺癌学会総会で、鳥取大学医学部附属病院胸部外科の中村廣繁氏が発表した。

 高齢者の肺癌は近年増加している。低侵襲手術や縮小手術の発展など、肺癌に対する外科の治療法は変化しつつあり、手術適応や術式選択には実年齢よりもPSや全身状態を考慮することが重要とみられている。このような背景から中村氏らは、日本呼吸器学会が提唱する「肺年齢」の客観的指標としての有用性を検討した。

 対象としたのは2004年1月〜09年4月に同科で根治的肺切除術を行った75歳以上の原発性非小細胞肺癌患者138人(平均年齢78.7歳、男性93人)。

 肺年齢は、潜在患者が多い慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの啓発において肺の健康を考える目安として用いられている。日本呼吸器学会の提唱に基づき、肺年齢を1秒量の値(FEV1.0(L))を用いて以下のように算出した。

男性の肺年齢=(0.036×身長(cm)−1.178−FEV1.0(L))/0.028
女性の肺年齢=(0.022×身長(cm)−0.005−FEV1.0(L))/0.022

 例えば、喫煙歴がない79歳の女性では、身長155.0cm、FEV1.0が2.11Lで、肺年齢は58歳となり、実年齢との差は21歳になる。逆に同じ79歳でも喫煙歴が60年以上ある男性の場合、身長167.5cm、FEV1.0が0.87Lで、肺年齢は142歳となり、実年齢との差は-63歳にもなる。

 中村氏らは、実年齢と肺年齢の差から以下の3群に分類し、臨床病理学的背景因子、選択術式、周術期呼吸器合併症発症率、予後について比較した。

A群:実年齢>肺年齢(5歳より大)
B群:実年齢≒肺年齢(5歳以内)
C群:実年齢<肺年齢(5歳より大)

 A、B、C群の患者数はそれぞれ33人、37人、68人となった。3群間の実年齢に差はなく、肺年齢はA群63.8歳、B群79.4歳、C群98.7歳だった。C群で、男性、喫煙者、呼吸機能障害を有する割合、米国麻酔学会(ASA)分類で「重度の全身疾患を有する」とされるASA-PSが3の割合が有意に多かった。

 各群の病期に差はなかったが、C群では縮小手術の割合が高いにもかかわらず、呼吸器合併症の発生率は16人(23.5%)で他群よりも有意に高率だった。A群は1人(3.0%)、B群は4人(10.8%)だった。合併症の内訳では遷延性リークが最も多かった。

 全死因の累積生存曲線をみると、3年生存率はA群65.9%、B群82.4%、C群62.1%で有意差はなかったが、A+B群の73.7%に対するとC群は不良傾向だった。

 高齢者肺癌の術式選択の参考、術後合併症の予測に肺年齢は有用と考えられ、合併症ハイリスク群に対する周術期の薬物療法や呼吸リハビリなど早期の治療介入の面からも有用な指標になると考えられた。

 呼吸機能検査の数値に比べ、肺年齢は患者にも分かりやすい。中村氏らはインフォームド・コンセントにおいて高齢者だけでなく若い世代にも使って効果を得ているという。